出版業界で編集の仕事をされていたECのミカタ株式会社の竹内さんは、転職をきっかけに“想定外”であった営業のキャリアを進むことになったそうです。挑戦と挫折の連続を経験されていく中で営業や複数のプロジェクトを指揮する 「会社から期待される人材」 になるまで、どのような歩みがあったのか、その軌跡を伺いました。
目次
営業は希望していた仕事ではなかった
前職で書籍や雑誌の編集をされていましたが、営業職へ転身された理由は何ですか?
これから伸びる業界、自分の経験が活かせる会社で働こうと思い、EC業界のメディアを運営している、ECのミカタにジョインしました。
当時、私はWEBや書籍の編集に携わりたかったのですが、営業をやってほしいと会社から要望があり、営業としてのキャリアをスタートさせることになります。正直に言いますと当時、営業職に対するイメージはあまり良くなかったです。営業=ノルマに追われる・ペコペコ頭を下げる・無駄に接待をしなければいけないという印象を抱いていたので、「営業だけはやりたくない!」という気持ちがありました。
ただ、営業を経験したこともないのに「最初から視野を狭めるのは良くない」と考えを改め、先ずはチャレンジしてみることに。営業職として初めて取り扱ったサービスは、紙媒体の広告営業でした。当時このサービスはリリースされたばかりでしたので、売り方もままなっておらず、教えてくれる先輩もいない。まさに0からスタートするという状況です。
営業開始直後に当時の代表や専務に同行できる機会があったのですが、社長も専務も忙しいので数回同行をしたら、一人で営業をすることになったのです。最初は、成果を出すために代表や専務の営業スタイルを見よう見まねでやっていました。しかし、完璧にトークを覚えたつもりでも、思うように成果が出ない日々が続きました。考えてみれば、代表と比較した当時のわたしは、キャリアや経験も浅く、EC業界や顧客のビジネスに対する知識も少ない。さらに営業も未経験・・・。このように代表とバックボーンが全く違う状態で、背伸びをして真似しようとしても、まったく実体がないという状態が起きていたのです。その現実を突き付けられた時に、解決の糸口が全く見えず、「いったいどのような営業を行えば売れるのか?」と途方に暮れたことを今でも覚えています。
営業未経験者がお客様から信頼を得るためには
売れる為にまず何から始めましたか?
代表から『若さを活かした営業をしなさい』とアドバイスを受けたのを覚えています。『若さを活かすとはどういうことか分かる?』と代表に聞かれ、元気と明るさと答えたところ、そんなの当たり前だろと言われたのを覚えています(笑)。若さを活かすというのは、深く掘り下げて行くと、元気や明るさは勿論のこと、良い意味で「顧客の期待値を裏切っていく」ということでした。
期待値を裏切るというのは、わかりやすく言えばお客様が持っている新人に対する偏見を、良い意味で超えていくというものです。私の場合「知識」を武器にすることで、新人に対する顧客の期待値を裏切っていきました。例えばベテラン営業パーソンの場合、業界やお客様のことを知っているだけでは、知識があって当たり前という評価になりますよね。ですが新人が経験豊富な営業パーソンと同等の知識を持っていると、顧客からは『若いのにすごいね』という信頼が得られます。信頼が得られると普段、聴きだせないような情報を引き出すことができたり、余裕が生まれてお客様の表情なども見えるようになってくるのです。
そこから私は『お客様の業界』と『お客様の会社』の情報を事前に収集することに時間を使いました。未経験の業界なので、仕事が終わってからもとにかく勉強しました。そうしていく中で少しずつ実績が上がっていき、無事売れる営業パーソンの仲間入りを果たすことができました。確実に、自信と評価を積み重ねていくなかで、わたしは一定の手ごたえを感じていました。実際、新商品がリリースされたタイミングで“営業リーダー”に抜擢されます。
そのような中、わたしは営業生活で第2の挫折を経験することになったのです。意気揚々とチームの仲間と営業活動に向かっていきましたが、全く成果がでませんでした。
サービスを信じることができなかった
何故、売れなくなってしまったのですか?
今思えば、当時わたし達はこの新サービスを良いサービスだと信じ抜くことができなかったからだと考えます。サービスを信じていないため、積極的にこのサービスを利用すべきだとお客様に訴えかけていなかったですし、お客様からサービスに対する懐疑的な反応があると、妙に納得してしまう自分がいました。心のどこかで「この商品はお客様に合わないのではないか…」と思っていたのだと思います。
勿論、このままで売れるはずもありませんから、リーダーとしてはこの状況を打破する必要がありました。先ずわたし達は、このサービスが本当にお客様にとって必要のない商品なのか、偏見を捨てて徹底的に議論しました。サービスの単純な良し悪しや、特徴で必要の是非を考えるのではなく、このサービスをどのように活用すれば、お客様のどういった課題を解決することができるのか?こうした価値の提供を突き詰めていったのです。
“広告より自社で集客した方が費用対効果が高い。”
この声を鵜呑みにしていると、営業はこの広告を高い商品と思い込み、自分のサービスに自信が持てなくなる、ということが良くあります。しかし、弊社のサービスを使っていただいているお客様はいます。本当に悪いサービスなら、お客様はゼロのはず。なぜ弊社のサービスを使っているのか。なぜ、弊社のサービスを解約したのか。なぜ、弊社のサービスを利用するに至らなかったのか。お客様の声を聴いてみました。すると、同じサービスでもそれぞれお客様が期待していることが全然違うことが分かりました。
お客様一人ひとりにとっての価値をしっかりと見極めて提案するようになってからは、商品への不安はいつしか誇りに変わり、チームのみんなが自信を持って活き活きと営業できるようになりました。
営業は、お客様の心を動かす仕事
営業で大事にしていることは他にもありますか?
「お客様の心を動かす力」ですかね!契約していただくには、まず目の前のお客様に良いサービスだと感じて頂き、その目の前のお客様が営業パーソンに変わって社内で関係者を説得するわけですから、まずは目の前のお客様の心を動かす力が重要です。心が動くというのは、この営業パーソンだからサービスを導入したいと思ってもらうなど、お客様が営業パーソンに引き付けられている状態です。
同じお客様でも商談をさせてもらえる営業パーソンとさせてもらえない営業パーソンがいます。お客様は全ての営業パーソンの話を聞くわけにはいかないので、少なからず会う人を選んでいる訳です。この前提に立ってみると、「この人の話は聞いておこう」といった、お客様の心を動かす影響力が必要になると考えます。
では、人の心を動かす上で大切なことは何か、それは「自分への自信」です。私の場合、振り返ってみると知識を誰よりもつけて顧客からの信頼を勝ち取り、サービスのことを誰よりも研究し、信頼するといったことが、結果的には自分への自信につながっていたのだと思います。自分に自信を持った状態でお客様へ提案をすることで、お客様の事業の未来も変わってくるはずです。
まとめ
竹内さんの様に未経験から営業を始めるというケースは少なくありません。営業未経験からのスタートを切った竹内さんは、お客様と同じ視点で話が出来る様に業界の知見知識を付けることや、サービスへの信頼を深めることによって自分への自信を付けていくことが成功のストーリーでした。どんなトップセールスも最初は営業未経験者です。未経験だからといって出来ない理由にはなりませんので、先ずは、業界やビジネスの知識、サービスの価値、これらとしっかり向き合い、自分自身の営業に対して自信を持てるようにするところから始めてみてはいかがでしょうか?