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自分の得意を知り、顧客との関係性を築くことが結果につながる ~ユアマイスター株式会社代表取締役社長 星野貴之さん

星野貴之さんは慶應大学卒業後、楽天株式会社に入社。さまざまな困難を乗り越えてトップに上り詰め、史上最年少役員候補になりながら、2016年にユアマイスター株式会社を設立しました。持ち前の成長意欲の高さで、どのように現状を打破していったのか。また、営業で重要視すべき点について伺ってきました。

目次

テニスで味わった敗北感から、営業職でトップを目指した

営業職は学生時代からの希望だったのでしょうか?

ボクは学生時代、10年近く軟式テニスをやっていましたが、成績は納得できないものでした。そして、引退する瞬間、「幼い頃からやっていなかったことが敗因だ」という言い訳をしてしまったんです。言い訳自体もイヤでしたし、もうそんな思いをしたくないと考えたことから、同期が一斉スタートで勝負できる営業職を希望しました。スポーツで1位になれなかった分、仕事でトップになろうと考えたのです。

ただ、営業志望で入社したものの、最初に配属されたのは金融部門。その後、3ヶ月遅れて営業担当になりました。スタートは遅れてしまったのですが、それでもトップになろうという意識は変わりませんでした。

仕事ぶりは、いかがだったでしょうか?

楽天でいただいた賞は10を超えます。全社MVPや年間MVPも受賞しましたし、全国で一番大きな部署を25歳で任されました。また、26歳になると「4年後に役員になれ」と幹部育成プログラム選抜されています。

不遇な環境でも、お客との関係性を重視したことが成功につながった

すばらしい実績をお持ちですが、環境が恵まれていたのでしょうか?

最初はまったく恵まれていませんでした。組織ですので営業先の取り合いもありましたし、よいお客さんを誰が担当しているかといった内部事情で成績が変わります。それによってモチベーションも左右されることを初年度に痛感しました。

上司の中には尊敬できる人もいましたが、そうでない人もいて、「新入社員だから」ときついところを担当させられたこともあります。当時の私は、「採用ミス」とか「史上最低の社員だ」などと言われていたほどで、1年目には辞表も書いているんです。

そのような不遇な環境をどのように打開していったのですか?

まずは、みんなの3倍がんばりました。その結果、全営業担当者が500人いる中で達成率では3位になったんです。しかし、それも評価にはつながりませんでした。規模が小さかったので、全体で見るとたいした営業成績とは言えなかったんです。そうなると、チャンスも来ません。

そこで、「誰もが気づくところまで、やらないといけない。まずは部署で一番になろう」と決意。とにかく自分にやらせてくれと何でも手をあげるようにしました。そして、与えられたチャンスに対しては1.5倍の結果を出すようにしたんです。すると、次のチャンスをもらえます。そこで再び1.5倍の成果をあげるように努めました。

それが徐々に好成績につながったということですか?

最大の転機となったのは、2011年3月11日の東日本大震災です。当時の担当は九州でしたので地震の被害はありませんでした。ところが、東日本が供給していた食品が売れなくなったことで、九州産の食品のニーズが上がったのです。当時、佐賀県を担当していたのですが、楽天内での野菜の月間流通は40倍になりました。

それは運が良かったということでしょうか?

チャンスを手にできたのは運もありますが、それだけではないと思います。当時は、「Eコマースで食品は売れない」と言われていました。1店舗あたりの売上は小さく、営業としてもあまりうま味はありません。それでも時間をかけて関係性を作ってきたからこそ、売上げの激増にも問題なく対応できました。実際、何か転機があったとしても、それを手にできない人は多くいます。チャンスを結果につなげるためには、事前準備や日頃からの関係性の構築が大切なのです。また、この功績は三木谷社長の目に留まることとなりました。一次産業に従事していたお客さんが、一気に輝きだすこととなったのです。

お客さんとの関係性はどのようにして構築していったのですか?

コミュニケーションが得意ではありませんでした。何も面白いことが言えないので、しゃべるのも苦手で、さらに不器用でもあります。でも、社内で評価されていないときから、お客さんとの関係はよいものでした。

「お前を見ていると自分の若い頃を見ているようで、いろいろと教えてあげたくなる」とよく言われました。相手にかわいがられることはとても大切なのです。取引先との関係も、結局は人間同士。信頼関係を築いたり、かわいがってもらったりすることは重要だし、そのために誠実に仕事をすべきです。「こいつと一緒にやったら面白いんじゃないか」という空気感になることが重要だと思っています。

売上げ10億円が100億円に!雇用を生み出したことが最大のやりがい

営業スキルはどのようにして身につけたのでしょうか?

ボクは最初、完全に自己流でやっていました。でも、2年目に、「自分の殻にこもっていてはいけない」と思い、いろいろな人と同行するようにしたのです。その中に、すばらしい成績を上げている人がいて、「こんな方法があるんだ」と気がつきました。営業も、ロジックと戦略が重要だったのです。

また、ボク自身が元々持っている潜在的な能力を認めてくれたことで、それを武器として使えるようになりました。自分の個性として持っていても、それを使わないと結果にはつながりません。これは今の仕事でも重要なこととなっています。

モチベーションを保つためにやっていたことはありますか?

ボクは、人の3倍やって1.5倍の成果しか出ないと思っていたので、とにかく活動量を多くしていました。電話も3倍かけていましたし、その記録をつけて自分を褒め、モチベーションを保つことに役立てていました。不遇なときは、こうするしかモチベーションを保つ方法がなかったと言った方が正しいかもしれませんが・・・。

営業をする上で心がけていたことはありますか?

野球に例えると、イチローは打率が3割4分あります。一方、プロ野球の平均打率は2割3分くらいです。10本に1本ヒットが打てるようになれば年俸が変わるわけで、その1本を上げるために、どれだけ追求できるか?というころが違いにつながります。追求すれば、自分はどのピッチャーが得意で、どの球が得意で・・・・・・というのが分かります。相手の特性を選んで挑むようになるし、それによって勝ち続ければ勝ちグセがついてきます。

これは、営業も同じこと。人間同士の関係なので、そこには必ず感情が関わってきます。それを分析して理解すれば、自分の中で拒否反応も出ないし、結果に出やすくなります。人への理解度が上がってくれば、心を掴みやすくなり、戦略的に対応できるようになります。

もっとも印象深いエピソードを教えてください。

あるお客さんは、売上げが10億円くらいでした。それが、40億円で上場し、今では100億円の売上げになっています。この売上げ上昇に関われたのは大きなやりがいでした。それによって50人だった社員が300人になっています。地方では若い人が働く場所は多くはないと感じました。そこに人の雇用が生まれたことは非常に価値が高いことだと思います。

マネジメントを学びに大学院へ。そして、起業。

大学院に通うことになったきっかけは?

営業は個人プレイです。そこでは上手くいったのですが、マネジメントをする立場になるとうまくいかないことが多くなりました。そこで、25歳の時、MBAを取得しようと思い大学院に通いだしたのです。当時は、上司は一人しかいませんでしたし、お客さんと接する機会がなくなったことで学ぶ機会も減っていました。そこで外部から学ぼうと思ったわけです。

高校大学とスポーツばかりしていたので、まともに学ぶのは10年ぶりになったわけですが、通い出すとすごく面白かったです。先生達もすばらしかったし、周りは年上ばかり。そんな環境で、ヒト・モノ・カネについて構造的に理解できるようになりました。

なぜ役員の道ではなく、起業に踏み切ったのですか?

当時は、社長や副社長について世界に行き、経営の話をする場に同席することもありました。そこで気づいたのは、彼らは圧倒的な経験を持っているということ。当時の私は27歳くらいだったのですが、「この人達と同じ経験をしなければ、こうはならない」と感じたわけです。

そこで、外に飛び出すことを考えるようになり、エージェントに登録。転職活動を始めました。ところが、納得できる転職活動はできません。理由は簡単で、楽天という平成の大企業を作り上げた三木谷社長よりも優秀な社長が見つからなかったからです。そこで自分で起業するしかないと気づき、ベンチャーキャピタルの支援を受け、1億円以上の資金を得て自ら起業しました。そして、今は経営をしながら、ソフトバンクアカデミアで孫正義さんから学び、アドバイザーや株主になっていただいている一部上場企業の社長からも様々な知識を得ています。

怖くはなかったのでしょうか?

インターネットビジネスにおいて、日本は後発です。でも、いずれ海外と同じぐらいの浸透率になるのは確実で、先にシェアを取っておけば市場が開くタイミングで大きく飛躍できると思っています。ボクは楽天で、現場と経営を両方見てきました。日本では最初に伸びたのは、Amazonではなく楽天です。その理由を自分なりに理解できているし、経験もしているので、やらない理由はなかったですね。

知識よりも人間性が大切。自分を商品化せよ

ご自身が営業を受ける立場になって感じることはありますか?

知識先行型の営業マンは、言葉がキレても、信頼できるかと言う面では厳しいですね。質問して帰ってくる答えで大体わかってしまいます。大切なのは、どれだけサポートしてもらえるか、どれだけ一生懸命やってくれるかというところ。そこには人間性が重要ですし、人と人との関わりを軽視しているような人はダメだなと思います。

最後にメッセージをお願いします。

自分の強みを理解し、それを生かした営業をすることが成功の秘訣だと思います。そのためには、まず自己分析をすること。自分が一番魅力的なポイントや一番強いと感じる部分を理解した上で、それをどうやって使うかを考えなければ成功パターンは生まれません。営業では、自分を商品として見ることが大切です。自分の商品価値をきちんと定義することから始めるべきでしょう。

また、理解していないのにうまくいった場合は、なぜうまくいったのか?を考えるようにすべきです。多くの人は、「なぜ、うまくいかなかったのか」分解しますが、それが分かっても、ダメな部分が治るだけで成功には繋がりません。「うまくいったからラッキー!」ではなく、なぜうまくいったのかを掘り下げる力が大切で、それを繰り返すことが自信となり、結果につながります。

まとめ

自分を商品化するための自己分析を優れたレベルで実現している星野さんは、トップセールスマンとして会社を成長させています。また、社員についても、ベンチャーだからと相手に合わせるのではなく、「自分たちが引っ張っていくんだ」というスタンスで営業することが大切だと教育しているとのこと。実際、社内には活気があふれ、大きな魅力と可能性を感じました。これからの星野さんの躍進にも注目です。

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