建設業界の当事者として20年の歴史を持ちながら、業界全体を魅力的な業界へ変革するため建設ITベンチャーとして急成長するユニオンテック株式会社。ですが急成長する事業についてまわるのがトラブルです。Executive Managerを務める大村貴文さんは、見えてくる問題に対する改善点を瞬時に見いだし、チャンスに変え大きな成果を創出してきました。取材では、大村さんに守りながら攻めるプロダクトマネジメントの極意と組織メンバーである林さんに組織内での変化について伺ってきました。
目次
キャリアのスタートは大手企業での営業
大学卒業後、新卒でJASDAQ上場の大手求人広告会社へ営業で入社しました。その会社に決めた理由は今となっては浅はかですが、説明会登壇していた課長の最年少記録を塗り替えたくて入社しました。
ギリギリにはなったのですが26歳で最年少課長になり当初の目的が果たせました。よくも悪くも最年少で来たので、次のステップが部長だったのですが、これがかなり遠かったんです。
当時の部長から「次の営業部長の候補はお前で考えている」と言われたんですけど、その方も40歳で、最短でいってもあと15年近くはこの仕事をするのかと考えた時に人生1回きりしかないと思ってレイスグループというヘッドハンティング会社に転職しました。
人生1回という代表の思いに共感
実は現職のユニオンテックは、レイスグループの時代のお客様でした。現会長(※当時社長)の大川から企業の売上のベースは内装業が牽引しているが、『人生1回しかないから職人の世界を変えることで勝負してきたいと思っている』と言われ、SUSTINAの構想を聞き『単なる新規事業』ではないと感じ入社を決意しました。
この言葉から大川の言っていたことが本気か本気じゃないかは判断できましたし、その思いや熱意も生半可なものではないと感じました。
林さんは何故、ユニオンテックなんですか?
私はもともとフリーランス通訳をしていました。通訳として仕事をしていた照明メーカーが代理店を立ち上げるとのことで入社することにしたのですが、前職の職場も少人数の組織で、それこそ色々な業務に携わりました。良い面もあったのですがそこでマルチな活動をつづけた結果、自身の強みがかわらなくなっていたことに気付きました。
自分自身は営業職が好きだったので、営業の仕事をベースに転職先を探していました。ユニオンテックは当時の採用ページや面接を通じて、会社の透明性が高く、同年代の若い人が活躍されており自分自身も成長、活躍できると感じました。また前職が電気関係の仕事をしていたこともあり、職人や建設業の方と関わる機会もありました。
予算が厳しかったり、現場でトラブルがあった際に良くしてもらった経験があり、自分自身この業界に貢献したい想いがあったのも理由の一つです。
大村さんが入社したときはどんな状況でしたか?
入社した当時、事業開発部という部署に入ったのですが、福利厚生サービスの拡大に携わっていたおり業務提携の業務に携わっていました。そんな中でSUSTINAの部署を横目に見ていたのですが、課題が多いように感じていました。
何故、そう思われたんですか?
発想は良いが「戦略」「戦術」がなかったため、まったく勝ちパターンが「型化」されていなかったので、組織として攻めの成長に限界があるように感じました。
例えば顧客へのフォロー対応です。受注時、受注後共に組織立っての戦略が無く、各メンバーの温度感のみで行っていました。当時は提供サービスの数も今より多岐に渡り、利用方法や提供価値をしっかりとご説明したり、どう利用すればよいかをセットしないまま「複数のサービスを仕えてお得」といった案内を実施していたこともあり「退会したい」というお声も多くいただいていました。
初回の案内をしてからの次のアクション等が全く型化されていなかったんですね。しかし、同時に新規会員様へのご案内も実施していました。例えるなら水を貯めていながら、そのバケツに穴が開いていた状態だったんです。このバケツが崩壊する前に業務を最短で変えるために私がその部署の責任者に就任しました。就任してからは、まず“守”のところから着手しました。
例えば有料会員様600社への接触を再度行いました。担当者がいらっしゃらなかったり、代表の方が一存で導入し社員は存在すら知らなかった等の事実が明らかになる会員様がいらっしゃいました。一社一社、担当者と決裁者を明確にしたり、最新の情報に更新していく等、基礎的な部分から改善していきました。
どういう流れで着手していったんですか?
まずは水がどこから漏れているのか、どのくらい漏れているのかを把握するところから始めました。顧客フォローを例にとると、どの企業の誰が、どのようなクレームをされているのかを把握するところから始めました。
受注時に誰と話をして、どういったニーズに、どのような提供価値を提案してご納得を頂いたのか。現在クレームとして頂いているものは誰がどのような不満があるのかを明確化させました。
当然、提案時に問題があったものもありますが、利用方法がわからない、自社の情報をどのように見せたら良いかわからないなど前向きなクレームもありました。そういった課題については利用マニュアルを作成する等明確に打ち手として全員が実施できる型に一つ一つ整理していきました。
では攻めの営業は全く進まないんじゃないですか?
守りをやっている時にまったく何もしないわけではなく、クレーム対応というキッカケではありますが、顧客接点を増やす中で顧客が抱える本質的な課題も見えてきました。数百社から聞いた課題感は大きく分けて2つあります。人材の採用と質の良い取引先開拓をしたいというニーズを把握することができました。これは我々にとって転機でした。
大川と話をする中で、人材の採用課題を解決するには、他の求人メディアも多い中で競合優位性を発揮するのは厳しいという結論に至りました。ですがもう1つの質の良い取引先の開拓という点では数千社の登録情報を活かすことができるのではないかと考え当時15あったウェブサービスをマッチングサイトのサービスに集中することにしました。
実は昨年、半年間は新規の営業活動は行っていませんでした。建設業のマッチングプラットフォームとしてプロダクトのリニューアルも実施した中で、どのくらいの流通量を生み出しているのかを把握するためにマッチングのフォローと、我々のサービスを経由した案件ヒアリングのみを行っていました。
その結果、半年で実際に500件以上の新たなお仕事の創出が出来ていることがわかりました。合計の流通金額も約3億円程度あると確認し、市場としての見立を立てることができたのです。
林さんも実際に働かれていてどのように感じていましたか?
大村が来てからは、組織は大きく変革していたのではないかと思います。戦略がない中で俗人的な営業をしていた時代から、必要なサービスを選択して、集中するサービスで弊社のバリューが発揮できるようになる、そんな変化があったように感じます。
当時の役割は掲載数の獲得とマッチングをプロデュースし流通金額を上げるといったことがミッションでした。以前の組織では、こういったミッションも戦略や戦術がない中で行き当たりばったりで行っていましたが、データドリブンな行動設計がされるようになっていたと思います。
例えば、大村は行動管理を重要視していて、まるでギプスをつけているようか感覚だったのですが、この計画を進めていけば自ずと成果が出るといった状況を作ってくれていましたね。笑
その管理によって適切な振り返りができるようになったのでこれも産物かと思います。
何故、行動管理にそこまでこだわっていたのですか?
当時在籍していた営業は、営業といっても元々商社の営業、ルート営業や施工管理出身の営業などバックグラウンドが様々でしたので同じ目線になるようにKPIを設定していました。
行動指標を伝え続けて習慣化させ組織を統制していかなければ、個人個人がやりたいようにやってしまい、またバケツに穴が開いてしまうと感じていました。そういったバラバラのチームでやっているので数字を大切にするという「共通言語を作る」ことが大事だと考えていました。
マッチングサービスSUSTINAはどんな思いがこもっていますか?
会長の大川は職人からスタートしているのですが、建設業界の職人の3Kいわゆる、きつい・汚い・危険を変えたいと思っていると以前私に話していました。3Kに代表されるような業界へのネガティブなイメージが一般的にはあると思います。ただ、きつい仕事や危険な仕事は他にもあると思います。同時にモノづくりへの喜びや、社会的に欠くことができない大切な業種でもあります。
我々はこの業界をより魅力的な業界へとつくり替えるために日々奮闘しています。課題はいくつかあるのですが、その大きな一つが「多重中請構造」にあると考えています。多重請構造で一次請けから四次請け、五次請けまでが存在していることで職人さんの労働環境の悪化につながっています。意味のある一次請け、二次請けだったら良いのですが必要以上に多重請けが存在しているのが現状です。
ですが、正直に言うと業界を変えるというのはそんなに簡単ではないと我々自身が強く感じています。なぜなら我々が課題と捉えている流通構造は70年以上の業界慣習や歴史の上に成り立っているため、一筋縄ではいかないのが現状です。
どんな風に変えていきたいんですか?
実現していきたい世界観は、発注者側が出会うべき受注者に出会い受託することで、受注者に対して適切な賃金を支払うことや利用するユーザーが最適な価格で利用できる世界観を目指したいと考えています。
我々はマッチングプラットフォームというITサービスで業界の課題解決に努めていますが、我々自身も建設業界での歴史もあり、働いているメンバーについても業界に対する知見を有しています。新サービスのテストも商品化の前に社内で実施できる環境や、顧客と同等の知見を有するからこそできる細やかなフォロー等、商品開発プロセスには我々にしかできない強みが多くあると自負しています。
我々の組織としても、より使いやすいサービスに進化させるために「信用情報」の蓄積に注力をしています。一つの同じ工種でも得意とする物件や、工法、また対応できるエリアや許可免許による受注金額の制限等様々な要素が存在します。国交省が定めている建設業許可は29種ですが、先ほどの要素を勘案すると数千パターンにも区分されます。
我々は会員企業への地道なヒアリング活動に注力しており、我々のサービスを使えば自社に合う会社に出会える世界観を作り上げようとしています。ITと縁遠いと呼ばれるこの業界だからこそ、ただ登録するだけだはなく「使ってもらえる」サービスにするため、大変ですがしっかりと進めていきたいと思っています。当たり前に最適な発注フローを提供して受注者の賃金が正しく支払われるという状態SUSTINAで実現できると我々は信じてそういった世界観を目指していきます。
まとめ
事業の成長にはトラブルがつきものですが、様々なトラブルもチャンスに変わる転機を意識した行動が大切だと語る大村さん。そしてバラバラの組織には共通言語や目線合わせとなる行動の管理が大切だとも仰っています。様々なサービスが開発されていく中で事業を最短で成長させるために必要な一手となるはずですので是非、参考にしてみてください。
SUSTINA(サスティナ)とは
大工・内装工事・設備工事・足場・鉄筋・解体・土木をはじめ全国10,337社の建設会社が登録する業界最大数のマッチングサイトです。これまで人の紹介で繋がりを作ってきた建設業界の「新たな出会いの場」として、SUSTINA(サスティナ)は工事職人探しや工事の受発注をより簡単に、お客様の目的に合ったサービスをご提供します。
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