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スモールスタートから始まる、オンラインセールスのすすめ〜株式会社SmartHR セールスグループ 正木聡帆さん〜

限られたリソースで成果を出すための手段として、また訪問営業ではアプローチできないリードへの対策として、オンラインセールスは非常に有効とされています。株式会社SmartHRは、営業部門をインサイドセールス、フィールドセールス、オンラインセールスと3種類に分け、プロダクトの全国展開に挑んでいます。その中心として活躍するのが、セールスグループオンラインセールス担当の正木聡帆さん。正木さんに、オンラインセールスを推進する上で欠かせない目標設定やチーム作り、商談の秘訣を聞きました。

目次

立ち上げ当初はスモールスタート。着実に実績を積み重ねた

正木さんがSmartHRにジョインした経緯を教えてください。

私のいた前職は、当初フィールドセールスの部門しかありませんでした。限られた業績を上げるために、商談数を増やすという戦略を取ったんです。そのためには営業の生産効率を高めないといけないねということで、オンラインセールスに着手し始めました。

訪問営業だと、1日2〜3件が限界でした。それがオンラインセールスに着手するようになって、多い日は5〜6件アプローチが可能になったんです。フィールドセールスのリソースの限界を突破する=生産性を高める手段の1つとして、オンラインセールスは有効だと思います。

SmartHRはもともと、商談を創出するインサイドセールスと、提案から受注までを担当するフィールドセールスの2部門で営業活動をしていました。当時の受注企業は東京が中心だったんですが、SmartHRを歴史に残るプロダクトにするために、全国規模で提案できる体制を構築することになったんです。

そこから、効率の良いオンラインセールスを本格的に行うために部署ができ、立ち上げのタイミングで私もジョインしました。それ以来、私たちはフィールドセールス、インサイドセールス、オンラインセールスの3部門という分け方で活動しています。

ジョイン後は、どんなところからオンラインセールスを始めましたか?

まずは従業員が100名以下の地方の企業様にアプローチして、ノウハウや経験値を積み重ねていきました。

中小企業と大企業では、検討フローが全く異なります。中小企業では商談で決裁者やそれに近い方が同席いただきやすいので、成果にも繋がりやすいです。オンラインセールスの立ち上げでは、スモールスタートでいかに早く結果を出すかが重要だと思っています。

多くの企業の経営層は、オンラインセールスの経験がありません。オンラインセールスを立ち上げてもなかなか結果が出ないと、「やはり訪問した方がいいのではないか」という思考停止状態に陥り、存続すらできない危険性があるので。

KPIも最初は無理のない数字を設定してもらい、確実に成果が出せるようにしました。

オンラインセールスのメンバーに求められるスキル

現在、SmartHRのオンラインセールスのメンバーは何人いるんですか?

立ち上げ当初は、私ともう1人の2名で、現在は9名までメンバーが増えました(2020年1月時点)。SmartHRではオンラインセールス立ち上げ前に一度、既存のフィールドセールスのメンバーが、Web商談も兼任していました。ですが、結局失敗してしまったんです。

もともとフィールドセールスのメンバーは、訪問提案を得意としていました。しかしWeb商談はお客様と対面していないので、商談中の情報がほとんどシャットアウトされます。既存メンバーはここに、大きなハードルを感じたみたいです。

同じ営業でも、求められるスキルがかなり異なるんですね。

メンバーが増える段階で、誰を採用すべきかは非常に悩みましたねSmartHRは主に中途採用・即戦力を採用してきましたが、そもそもオンラインセールス人材の市場が非常に小さいんです。

なので、そこは早々に諦めました。実際に、現在のメンバーのほとんどはオンラインセールス未経験者です。その代わり、採用では接客業経験者の方々に重点を置きました

接客業経験者の方々は、オンラインセールスに向いているんですか?

大きなメリットは、「お客様と丁寧なコミュニケーションができる」ということです。メンバーには自動車、結婚指輪の販売など高級品の販売経験者がいます。彼らをはじめ、販売経験があるメンバーはお客様とのコミュニケーションの取り方がとても上手です。

オンラインセールスは、お客様に与える情報がほとんどが音声で、そこに少しだけ映像が加わります。細かな言い回しが、受注にそのまま直結する組織なんです。不快な相づちや言葉尻、言い回しを多用する人とは、長く話していられないですよね。

それと、メンバーはビデオチャット時の「カメラ映り」にも気を使ってくれます私たちの中では「ベルフェイス映え」と呼んでいるんですがね(笑)。Web会議で相手に失礼なく、見栄え良く写っているか。違和感はないかはかなり意識します。訪問営業だって、対面で商談するときは身なりに気をつけますよね。オンラインセールスになった途端、それがおざなりになってはいけないと思うんです。

Web商談時に見せる資料なども、なるべく1スライド1メッセージで完結させるなど、視覚的な工夫を重ねました。

メンバー拡大からの大失敗。そこから学んだ受注獲得の秘訣

オンラインセールスの組織が拡大する中で、難しいと感じたことはありますか?

100名以下の企業への商談は、比較的すぐに成果が出せました。その後採用を強化するとともに、対象企業を「300名未満」「300名以上1,000名未満」「1,000名以上2,000名未満」と複数のティアにわけ、担当を分担してアプローチしました。

この分担を早期に実施したことが大きな失敗でした。メンバーのスキルの成熟度がバラバラで、組織全体が結果を出せなくなったんです私も大企業を担当しましたが、全然ダメで。個々の経験値はもちろん、組織全体でもノウハウを蓄積できなくなったのが、大きな要因だったと思います。

どうやって課題を克服したんですか?

一度、全てのティアを全メンバーでアタックすることにしました。まずは300名以下の企業、次に1,000名以下の企業と全員で取り組んで、営業メンバー全員の経験値が上がった頃に、大企業の実績も増えてきたんです。そして大企業に強いメンバーは専任にして、あとは300名以下を担当するといった分担制を復活させました。

正木さんなりの、企業規模別の攻略法はありますか?

まだまとまっていませんが、従業員規模の少ない企業は、初回商談が命だと思います検討フローも少ない上、決裁者の方が同席いただくことも多いので、商談1回で決め切ることができるかどうかかなと。

もちろん、複数回の手順を踏むこともあります。とは言え、従業員が30名程度で検討が1年など長期では、受注は難しいでしょう。その時も、なるべく1か月〜2か月で案件を完了できるように意識します。インサイドセールスにも、なるべく決裁者に同席してもらうようにお願いすることが多いです。

大企業では、複数回の検討を重ねて導入するケースが多いですよね。

私は大企業担当ですが、まだまだ試行錯誤中です。ただ、今日までに受注できた企業は、必ずオフラインのイベントに参加いただいているという特徴がありますこの成功体験の再現性を高めるための施策を、組み立てているところです。

今後はマーケティングチームと連携してイベントを企画したり、マーケティングチーム主催のイベントに、お客様や決裁者を呼べるようにしていきたいですね。オンラインセールスとマーケティングとのかけ算が、今後の課題かもしれません。

検討中のお客様に、いかに伴走できるか

その他に、オンラインセールスで大切なことがあれば教えてください。

「初回商談が命」という鉄則から外れますが、検討中のお客様と伴走して寄り添えるかが大切だなと思います訪問営業がお客様に与えるインパクトが5とすると、オンラインセールスは2〜3くらい。名刺交換もできないので、サービス名や担当者名を覚えていないということも少なくありません。

そこで求められるのは、回数を重ねること。いかにこまめに連絡してタッチポイントを増やせるかが重要じゃないでしょうか。

伴走のために必要なことはなんですか?

パイプラインとToDo管理です。私たちはセールスフォースを使用して、お客様の検討内容を入力しパイプライン管理を常に最新の状態に保つようにしています。そしてToDo設定で、初回商談から決めたことを遅延なく取り組めるようにしているんです。

オンラインセールスに限らず、当たり前なことだよね?と思いますよね。ですが、これができる人は非常に少ないです。

パイプライン管理・ToDo管理ができる人とできない人の差は、どこにあるんでしょう?

自分のキャパシティがわかっているかどうかじゃないでしょうかキャパシティがわからない人は、組織でパイプライン・ToDo管理をやると決定しても、情報更新やToDo消化ができません。1日にできる作業量の上限がわからないからです。個々のメンバーが自身で把握できればいいですが、最初はわかりません。ここをいかに指導するかが、マネージャーの役目かなと思います。

お客様から「Web商談にしたい」と言われる環境を整えたい

正木さん個人として、今後取り組んでいきたいことはありますか?

私は営業の中でも、特にオンラインセールスが好きなんです。それは、お客様にとってベストな手段と考えているから。お客様のニーズに対して、私たちは訪問時間なしで即レスしやすく、組織としてもっとも期待に応えやすい環境にあります。

しかし、まだまだオンラインセールスは主流の営業手段ではありません。オンラインセールスに携わって約4年になりますが、将来的にお客様の方から、Web商談を求めてくるような状況を作れれば、私にとって1つのゴールかなと

そのためには、やはりオンラインセールスのメリットを伝えられるかどうかだと思います。

  • ・営業担当と日程調整しやすい
  • ・会議室取らなくていい
  • ・即レスが帰ってくる
  • ・期待にすぐ応えてくれる
  • ・営業が疲弊しないので、担当がイキイキしている

こうした良さを、全国のお客様に伝えていきたい。そのためには、今後中小企業だけでなく、大企業の受注実績もどんどん積み重ねて、Web会議を商習慣に根付かせたいですね。

まとめ

フィールドセールスにはない強みを生かし、一方で直接対面できない故の弱みをチーム内のノウハウを蓄積して補うことで、オンラインセールスは大きな成果をあげることができます。スモールスタートで着実に実績を積み重ねること。初回商談と検討期間中のフォローを丁寧に行うこと。正木さんも実践したこれらのポイントを、ぜひ活用してみてください。

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