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野村證券、プルデンシャル生命保険の営業でわかったセルフマネジメントの極意 ~株式会社イコールワンホールディングス代表取締役社長 安田錦之助さん

株式会社イコールワンホールディングス代表取締役社長 安田錦之助さんは、野村證券とプルデンシャル生命保険という日米の2大ブランドで営業を経験し、起業しました。まったく違ったという2社の営業手法と、そこから学んだ基本姿勢、成績が振るわないときの対処法などをうかがってきました。個性で勝負する日本式営業と体系化されたアメリカ式の営業はまったく違うものだった

2社で営業を経験してきたそうですが、どのようなスタイルの営業だったのでしょうか?

野村證券では、個人法人問わず新規開拓の営業で、お客様から資産をお任せ頂いて運用していくという営業でした。株や投資信託、社債、国債といったものです。一方、プルデンシャル生命保険では、主に紹介型の営業をしていました。扱う商品は保険一本です。

それぞれの会社での営業成績はいかがだったでしょうか?

野村證券での営業成績は、600人中70位くらいです。悪くもないけど、特別良いわけでもないといった感じですね。自分のスタイルを貫きながら、しっかりと組織に貢献できるような数字の立て方をし、本当にお客さんを第一に考えた結果としてはよいものだったと思います。

一方、プルデンシャルの時の成績はよかったですね。同期でも1位でしたし、毎年社長の表彰も受けていました。成績優秀者だけが参加できるアメリカでのイベントにも参加させてもらいました。

日本の営業とアメリカの営業を体験されたわけですが、違いはありましたか?

野村證券の時は飛び込み営業でしたが、営業手法に関しては個の力が重視されました。新卒全員が行う研修が終わった後は、皆自分なりの営業スタイルを試行錯誤して確立していきます。そのため、営業スタイルは人それぞれです。実際自分の営業スタイルを確立して素晴らしい成績を残している方もいらっしゃいます。

一方、プルデンシャルでの営業は体系化されていました。研修のための分厚いテキストがあり、そこには営業の仕方はもちろん、心理学とか、トーク集のようなものがたくさんありました。『一般論を話したうえで具体的に話さないと、いきなり具体論を話したのでは押し付けになりますよ』とか。そういった心理学的な部分まで網羅したマニュアルが完備されていたのです。「アメリカ人って、こういう風に営業しているんだ」と感心しました。

どちらがいいと言うわけではなく、どちらにもメリットがあります。ただ、あまりにも違ったのは驚きでしたね。

営業とはよいものを運ぶ仕事。何もないなら、元気だけでもいい。

今は営業を受ける側になったわけですが、どういった営業が好印象を与えられるのですか?

僕が飛び込みを受ける側として思うことは、その人の話を聞くかどうかというのは、入ってきた瞬間に決まってしまいます。遠慮があるからだと思うのですが、こそ泥のようコソコソと入ってくる人がほとんどです。でも、受け手からすると、そんな人の話は絶対に聞かないですよね。

僕はノックして返事があったら入って、全体朝礼くらいの声で全員に聞こえるように自己紹介をしていました。そうして、目があった人に名刺を受け取ってもらうという感じでしたが、だからこそ話を聞いてくれる機会が多かったのだなと言うことが分かりました。

では、入りにくいという感覚はどのようにして解消すればよいでしょうか?

飛び込み営業なんてそもそも無茶振りだと思っていますし、失礼なことだとも思っています。だから、入りづらくてしょうがないものです。でも、営業というのは、相手に対して何かしらの「よいもの」を運んでくる人ではないかと考えます。運ぶものが何もなくて、手ぶらで飛び込んだら失礼ですけど、そうでないのなら相手のためになるはずだと。

それは、自分の会社が扱っているものでもいいと思うし、本当に何も無いのなら、元気な挨拶とか、そこの雰囲気をよくするとか、そういうことでもいいと思っています。僕は新人時代、「元気だけでも届けよう」と思っていて、だから勢いよく挨拶していました。

「元気を届ける」に関するエピソードは、何かありますか?

野村證券時代、大阪にある自動車の代理店での話です。そこは、フェラーリやロールスロイス、ベントレーなどが10台以上並んだショールームがあり、その奥のガラス張りのオフィスに、いかにも仕事ができそうな社長とかセールスの人がいるようなところでした。後で分かったのですが、西日本で一番売れているところだそうです。僕は、「ここはぜひ、お客さんになって欲しい」と思い通いつめたのですが、向こうはめちゃくちゃ忙しく、話す隙なんてありません。そのため、毎日挨拶にだけ行って、自分の自己紹介シート(顧客に営業担当を知ってもらうために趣味や経歴などを書いたシート)を置かせてもらっていました。

そうしたら、ある日、たまたま時間があると言うことで中に通してもらったら、自分の自己紹介シートが応接室の壁に貼ってありました。「ちゃんと話をしたこともないのに、なんでそこに貼ってくれていたんですか?」って聞いたら、「お前はめちゃくちゃがんばっているから、すごい元気をもらっていた。俺もがんばらなければいけないと思って、ここに貼っているんだ」と言われました。自分がやってきたことが正しかったのだと思えてうれしかったですね。その後、そのお客さんからたくさんの人を紹介してもらえました。

成績が振るわないのは誰にでもあること。そういう時こそ、やるべきことをやる。

営業成績が振るわないときはありましたか?

僕の場合、基本的に半分くらい振るっていないです(笑)。

若い営業の人に多いのは、勢いとか自分の調子の「波」が悪くなりがちというのがあるのですが、これは営業スタイルが体系化されていないために起こってしまいます。つまり、営業を体系化して、コントロールがしっかりできるようになると、波は出にくくなります。

例えば、元気というのは、ずっとフルパワーでいられる人っていないと思うし、絶対に落ちるものです。元気が落ちたら成績も落ちるのですが、さらに悪いことに、成績が落ちたことに対してさらに落ちてしまう。こうして、泥沼にはまるという最悪のスパイラルに陥ります。

そこで、落ちたときこそ客観的に考える必要があるのだと思います。「そりゃ、波くらいあるよ」って。「前に元気がなかった時の反動が、今来ているだけだ」っていうことを分かっていればよいのです。

波と成績には時差があるということでしょうか?

そうですね。業種にもよりますけど、3週間か3ヶ月の時差があると思っています。今結果が出てない人は、3週間前、3ヶ月前にサボっていた人です。同じように、がんばった人も結果が出るのが3週間後、3ヶ月後なのです。結果が出ない期間というのは長く感じますが、まずは自分の中でプロセスを作成して、「コレとコレをちゃんとやって・・・」と考えるようにすれば、必ずよい成績になる日が来ます。

でも、焦ってしまいますよね。他にやるべきことって何でしょうか?

そうですね。立て直すのがキツイ時は、誰かと一緒にやってみるのもいいと思います。上司も部下の成績をよくしたいと考えているわけですから、上司に「力を貸して欲しい」ということをちゃんと伝えるのです。自分よりも知見があるから上司なわけで、「じゃぁ、こうやって立てなおそう」というステップをちゃんと組んでくれるはずです。

他に、営業スキルを磨くために、やるべきことはありますか?

スキルを磨くために一番手っ取り早いのは、自分が営業しているところを映像で撮ることです。そうすると、いろんなところが目に付きます。例えば、「見た目がまずかったなぁ」とか、「こんなしゃべり方では、何を言っているのか分からないなぁ」とか。そこから学び取れることがたくさんあり、客観視できるので、ぜひお勧めします。

営業を通じて、社会人として一番重要な「信頼される」ということを学んだ。

営業スキルは、自分の起業に役立ちましたか?

これは両論ありまして、役立っているといえば、すべて役立っています。でも、営業時代の能力が、経営者として直接役立つわけではないとも感じています。その理由は、営業に求められている能力とマネージメント層に求められている能力の種類が全然違うからです。

ただ、根本的な話として、営業は基礎作りという意味では優れています。だから、スキルそのものが役立たなくても、社会人としてやらないといけないことを身につけられます。例えば、挨拶をちゃんとする、レスポンスが早い、要望に対して的確な回答ができるなど。信頼されるということが、おそらく社会人として一番の要で、その信頼を得ることにいろんな枝葉の部分があるのだと思います。その根幹の部分を育てるという意味では、営業を経験してよかったと思っています。

最後に、営業とはどんな仕事でしょうか?

営業という職種は、いろんな人に出会える仕事です。本来の自分では出会えない人に仕事を通して出会えます。そうして出会った人が自分の人生を豊かにする人なこともあるわけで、どんどんいろんな人に前向きに会っていけば、自分の人生も大きく切り開けます。「今日はもう疲れたなぁ。飛び込み営業やめようかなぁ」と思っても、あと一件がんばることで、1年で365人と多く出会えることになり、10年間で3650人、30年間で1万人を超える人と多く出会えるわけです。毎日、あと一歩あと一歩をもっとポジティブな気持ちでやっていけば、もしかしたら次の人が自分の人生を変えるかもしれない。営業とは、そういう職種だと思います。

まとめ

安田さんが代表を務める株式会社イコールワンホールディングスは、一歩入ると、みんなの元気が伝わってきます。「メンタリングは環境が作る」と言い、会社を意識的にポジティブにしようとしているとのこと。これも、営業時代に「元気を届ける」ことを徹底してやってきたことの証なのではないかと感じました。

営業成績が振るわないときこそ、元気にやっていくこと。これを徹底するだけで不振期間を短くできるというのは、実に役立つものではないかと思います。

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