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注目のインサイトセールスでは、課題解決よりもビジョンへの貢献を伝えよ ~株式会社アルヴァスデザイン代表取締役CVO高橋 研さん

現在は、大企業も参加する営業研修や営業力強化セミナーを行う株式会社アルヴァスデザインの代表取締役CVO高橋 研さん。書籍「実践! インサイトセールス ― AIに駆逐されない営業力」も出版し、まさに営業のプロフェッショナルと呼べる存在ですが、社会人としてのスタートは営業職ではなかったと言います。営業以外の仕事を知っている高橋さんだから分かる営業の難しさやコツ、今注目を集めるインサイトセールスについて伺ってきました。

最初はうまくいかなかった営業。楽しんでやりはじめたら成果が上がりだした。

経歴を簡単にお聞かせください。

新卒で化粧品や健康食品を作っているファンケルに入社し、製品開発やマーケティングを担当しました。実のある仕事でしたが、お客様の顔が見えない仕事だったため「お客さまから直接ありがとうと言われる仕事をしたい」と考えるようになりました。そして、20代後半で営業の世界に飛び込む決意をしたのです。

リクルート出身者が創った株式会社ア・キューブというベンチャー企業で2年半ほど営業を経験しました。自分自身の営業活動の他、携帯電話ショップの研修をやったり、店頭調査をしたりと、休日返上で各地を回るハードな仕事を経験させてもらいました。

その後、大学の先輩のご縁でエム・アイ・アソシエイツ株式会社というコンサルティング会社に転職しました。そこでは、コンサルティングサービスのほか、教育サービスを売っていたのです。そこでの経験は約7年。その後、2013年にアルヴァスデザインという会社を作り現在に至ります。

営業職にジョブチェンジし、最初からうまく行きましたか?

まったく思い通りに行かなかったですね。飛び込み営業を、1日に100件、200件するのですが、それでも1件も成約が取れないということもありました。そういう状態がしばらく続きましたので、とにかくつらかったですね。

携帯電話を売っているとき同行した先輩が、「この会社はダメだと自分で決めず、1軒も飛ばさずに営業をする」という飛び込み営業の鉄則を教えてくださいました。ある日のことです。1つのビルの全テナントへの飛び込み営業が終わって、次のビルに行こうと思ったら、「ちょっと待て、1つも飛ばすなと言っただろう」と言うのです。私が1軒も飛ばしていないと主張をしたら「間にある交番があるじゃないか」と。通常で考えたら、交番に営業に行くのは無謀ですよね。それでも飛び込んだら、契約が取れたのです。

その経験もあって、営業って面白いと思いはじめました。元々、教育に興味があったので、つらい経験が話のネタになるなと考えたわけです。そして、経験したことを全部書き留めはじめると営業が楽しくなり、同時に成果が上がるようになりました。

なぜ、成果につながったと思われますか?

そうですね。つらそうにやっている人と、楽しそうにやっている人と、どちらからモノを買いたいかと考えると、ほとんどの人は楽しそうにやっている人ですよね。

孔子の言葉で「知好楽」という言葉があります。 怠けている人は知識を得ようと頑張っている人に勝てない、知識がある人はその仕事を好きだと思っている人には勝てない、その仕事を好きな人は楽しんでいる人には勝てないそうです。それだけ、楽しむことは最強だということです。

当たり前のことをやれば、お客を動かせる

高橋さんは営業スキルをどのようにして身につけたのでしょうか?

ファンケルにいたとき、私は営業を受ける立場でした。年間、数百回の営業を受けていたと思います。その中で、売れる営業と売れない営業を見極められるようになっていました。

それは、営業担当者によって基本的な部分が違うということ。当たり前のことができない人が、いかに多いかを体感していたのです。例えば、原料のサンプルを置いていったとき、1週間後に、「いかがでしたか?」という電話をかけてくる人は10人に1人もいませんでした。

営業を受けた側からすれば、電話かかってきたとき、原料を触ってないと申し訳ない気持ちになるので積極的に試作を行います。つまり、当たり前のことをやることは、お客さんを動かすきっかけを作ることにつながるのです。

ほかに、できる営業マンに共通することはありましたか?

そうですね。気がきく人は商品紹介をあまりしませんでしたね。目の前の開発担当者が何の仕事をやっているのか、何を作っているのかとかといった話をしっかりと聞いて、その人に合ったサンプルを持ってきます。開発担当者は、一人一人担当製品が違うのですが、それをノートに全部書いてあるわけです。だから、適切な提案ができる。これも当たり前のことなのですが、実際にやっている人は少なかった気がします。

原料のサンプルは試せないほど持ち込まれるので、すべてを試すことはできません。だから、優先順位を上げることはとても大切なのですね。どんなに良い原料でも、試作に使われない限り製品にはなりません。多くの原料サンプルが開発担当者に触れられずに機会損失を起こしています。

お客様視点に立つことの大切さについては、営業を受ける側だったからこそ、理解できたことでしたね。

インサイトセールスで目指すべきは、ビジョンへの貢献

最近の営業で、重視されていることはありますか?

お客さまの課題解決のための提案営業を行う企業が増え、さらに進化し始めていますね。お客様のビジョンをいかに捉え、それに貢献できるかという視点が差別化につながると感じています。

僕の中では、お客様のビジョンを踏まえた提案ができることが、インサイトセールスの核だと思うのです。

インサイトセールスをイメージできない人もいると思います。具体的な例を挙げていただけますか?

私がある自動車メーカーのお手伝いをしたとき、役員の方にプレゼンをする機会がありました。事前にその会社のホームページを見ていたら、心を打つようなビジョンが書いてありまして、プレゼン資料に、「このビジョンが実現すると、こんないいことがあるかもしれないですよね」ということをいろいろ書いたのです。そうしたら、非常に喜んでいただけましてね。

一週間後に、その役員から電話が掛かってきました。「あの資料に書かれた内容、今度の役員会とか株式総会とかで使っていいですか」と。これは受注するよりもうれしかったですね。共感が得られたような感覚で。その後は、何を提案しても話をしっかりと聞いてもらえる関係になりました。こうなると、営業はしやすくなります。

これは問題解決型の営業では成しえない、価値が刺さった瞬間でした。これこそがインサイトセールスなのです。

事前に企業のビジョンを知るにはどうすればよいでしょうか?

経営者の声を知ることですね。ホームページを見るのもひとつの手段ですが、ここにはきれいごとが書かれているケースがあります。いろいろな人たちが考えを出し、うまくまとめたことが書いてあるに過ぎないのです。ベストは経営者から直接聴き出すことですが、それが叶わない場合は、リクナビなどの求人広告サイトを見るのが一番早いように感じています。経営者の生の声が書かれていることが多いですし、経営者との会話の材料にもなります。

営業の場で特に意識すべきことはありますか?

名刺交換をした直後早々に「御社のビジョンは?」と聞いたら、経営者は「お前何言っているんだよ」と思いますよね。そうならないために、水を向けるようなコミュニケーションをすることが重要となります。経営者の経歴を聞いたり、創業の経緯を聞いたりして、その上で「じゃぁ、どういう会社を目指したいんですか?」という順序で話をする方が、核心に迫れます。

本当は、経営者はみんな、話したいと思っています。自分の人生に肯定感持ちたいですから。自分の中で一番つらかったときの体験が自分の礎になっていることもありますし、そこに共感しながら話を聞いてくれるのはうれしいことです。だから、それを話させるコミュニケーションが大切ですね。

あとは、「何に問題を感じているか」よりも、「何を目指しているのか」というところに焦点を当てるべきだと思います。問題点や課題は短期間のうちに変わることがあります。その度に提案書が無駄になるとかは避けたいですよね。

その点、何を目指しているのかという部分は変わらないですし、営業自体も楽しくなります。話も盛り上がりますしね。営業が楽しくなると、仕事が楽しくなり、人生が楽しくなります。よいスパイラルが生まれ、顧客理解も深まるんです。

経営者とのコミュニケーションが自身のキャリア開発に直結する

他に、何か大事なポイントを挙げるとしたら、どういったことでしょうか?

注力事業などはホームページを見れば分かるので、それを事前に調べて仮説を立てていくことが大事ですね。

あとは、お客様が言ったことの意味が分からないとか、抽象的なことを具体化しないまま話を流してしまう人が多いですが、これらはどんどん聞くべきです。私は根掘り葉掘り聞きますが、それで怒られたことは一度もありません。話せないことは「話せない」と言われますから、まずは聞いてみることが大切です。

さらに言えば、基本動作のようなものは反復練習をして、無意識に行動ができるくらいになっておくべきだと思います。なんか、あれをやって、これを聞いてと思っていると頭がいっぱいになってしまいますから。それが無意識でもできるようになれば、その分、お客様を観察することができ、さまざまなことに気づけるようになります。名刺交換と自社の説明くらいは、目をつむってもできるくらいにしておくべきです。

最後に営業をする方に、メッセージをお願いします。

経営者との会話はとても大切で、リクルートのマネージャーの中には、「経営者以外と口を利くな」と言い切る人がいると聞いたことがあります。経営者は百人いれば百通りの考え方があります。それをきちんと聞いていくと、物事を多面的に見られるようになり、自分の素養も自然と培われてきます。それが結果的に、ビジネスパーソンとしてのキャリア開発につながっていきますので、ぜひ皆さんも、経営者との話を重要視してください。

まとめ

いくつかの会社に所属してきた高橋さん。退職した会社の社長との交流は今もあり、いつでも直接コンタクトが取れる関係だと言います。自分の専門分野を活かしながら経営者と話をする姿勢が、対等な関係構築につながっていることを、自らが体現しているように感じました。これからのますますの活躍にも注目です。

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