営業をするうえで、論理的思考は直感的思考よりも優れているといわれることが多いです。なぜそのように考えられているのでしょうか。
今回は、営業が身につけたい論理的思考のメリットとトレーニング法についてご紹介します。
目次
論理的思考と直感的思考について
対極にあると考えられている2つの思考が論理的思考と直感的思考です。しかし、この2つの思考について明確かつ簡潔に説明できる人は少ないでしょう。まずは、論理的思考と直感的思考についておさらいしていきましょう。
1.論理的思考
論理的思考はロジカルシンキングとも呼ばれている思考方法のことで、問題を細分化したうえで整理することで、仮説を立て、検証していくときに必要となる情報と分析作業を明確化します。これにより、適切な判断を下すことで結論を出すという思考方法です。
最大の特徴は筋道を立てて考える点にあります。通常、物事というのは様々な要素が複雑に絡み合って存在しています。これを分解してひとつずつ整理していくことによって、問題への理解を深め、仮説を立てることで結論にたどり着くことができます。論理的思考は問題解決や情報の整理など、様々なシーンで役立つスキルであり、一般的に営業という職業に着く際には身につけておく必要があるといわれています。
2.直感的思考
論理的思考と対極にある思考方法が直感的思考です。直感的思考とは、なんとなく決めることのことを言います。私たち人間が日常生活で論理的思考を使う機会はほとんどなく、約98パーセントは直感的に物事を決めているとされています。
直感的思考について、もう少し詳しく説明するならば、前置きや推論することなく、無意識に結論を出す思考方法といえます。たとえば、定食屋でラーメンかチャーハンで迷っているとき、長く頭を抱えることはあっても、仮説1、栄養バランスの観点から見て。仮説2、食べ終わった後に得られる満腹度から見て……というように、いくつもの側面から答えを導き出す人はほとんどいないでしょう。
直感的思考は私たちがごく当たり前に身につけている思考法であり、素早く結論に至ったり、アイディアを出したりする際に役立ちます。
論理的思考が優位といわれるワケ
日常生活では多くのシーンで活用されている直感的思考ですが、ビジネスシーン、特に営業職では論理的思考のほうが優位とされています。これは、一般的に論理的思考が高いほど、人間関係が円滑に進められるとされているためです。
一人で作業を進めるような事務職や工場内での流れ作業の場合、論理的思考はほとんど使用しません。しかし、その先に人とのコミュニケーションが必要になるシーンがあると、論理的思考が必要になります。直感的思考にはすばやく結論にたどり着けるというメリットがあるものの、関わる人の心を突き動かすことはできないというデメリットがあります。
例えば、自分が企画したプロジェクトを提案するとき、「どうしてこの方法にしたのか」と聞かれたとしましょう。そのようなシーンで「直感です」と言ったとしても何の根拠もない理由に感心する上司はいません。他者に訴えかける必要がある場合は、論理的思考に基づいた根拠を示さなければなりません。これは、顧客に対する交渉など、相手やシーンが変わっても同じことです。
使い方次第で直感的思考も役立つ
一般的に直感的思考より論理的思考のほうが優位だといわれているものの、使い方次第では直感的思考も営業活動を進めるうえで活用することができます。直感的思考による最大のメリットはスピード感のある対応ができることです。例えば、ライバル会社と競合しているコンペに参加している場合や、クレームに素早く対処したい場合などは、直感的思考のほうが優位に働きます。
また、論理的思考のデメリットとして、時間をかけて導き出した結論と実際が異なるケースも多いです。現実世界では、イレギュラーの発生はよくあることです。そのため、綿密に仮説を立てて想定した理論の通りにいかないことも多いです。そのため
、現実に沿った論理を展開できるよう心がけることが大切です。このような観点から見ても、スピード感のある直感的思考が優位になるシーンは少なくありません。
さらに、新たな発想が必要になるクリエイティブな仕事では論理的思考が好まれない傾向にあります。これは、論理的思考が既成事実に基づいた問題解決に向いているためです。既にあるデータベースの中から仮説を立てて、結論を導き出すため、今までにないものを生み出すイノベーションやクリエイティブな思考が求められる現場では向いていません。
このように、シーンにあわせて論理的思考と直感的思考を組み合わせて活用することが大切です。
論理的思考を育てるトレーニング法
直感的思考は私たちが当たり前のように身につけているスキルです。しかし、論理的思考もトレーニングを積み重ねることにより養っていくことが可能です。トレーニング方法は幅広く、結論から伝えるだけでも十分な効果が見込めます。何気ない上司との会話の中で、結論を先に伝えるよう意識してみましょう。端的に情報を伝えることができるため、会話のキャッチボールができ、スムーズにコミュニケーションを取ることができます。
また、提案内容に対する根拠を3つ用意することも大切です。一般的に物事を説明する際に、根拠は複数用意しておいた方が説得力が増すとされています。しかし、根拠があまりに多いと、情報が整理されていないという印象を与えてしまいます。説得力があるとされているのは3つ程度の根拠。結論とあわせて根拠も簡潔に提示、説明できるように意識してみてください。
日々の会話の中でも少し意識するだけで養うことができる論理的思考ですが、さらにスキルを磨くトレーニング方法があります。そのひとつがMECEです。
MECEは「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の略で、漏れがなくかつ重複することもないという意味があります。MECEは論理的思考の基本概念であり、ビジネス戦略用語としても頻出します。MECEを意識することで、論理的思考の精度を高めることが可能です。具体的には2つのアプローチ法を考えるという対策があります。全体から詳細へと視野を広げていくトップダウンアプローチと、詳細情報を集めて全体像をまとめるボトムアップアプローチという2つの方法から物事を見ていきます。
この他、ピラミッド構造という概念もあります。3つの質問を繰り返していくことで、結論の制度を高めることができます。問題や物事を分解してシンプルに表現することができるため、構造の見える化ができ、思考を容易にできるというメリットがあります。ピラミッド構造を身につけるうえでは、紙に書き出すということが大切です。全体や問題を作り出している要素同士の関係性を理解できるだけではなく、書くという行為自体が右脳の活性化に作用します。また、MECEに通じる漏れを未然に防ぐことも可能です。日常生活の中でも意識的にとり組むことで、論理的思考の育成に役立ちます。
論理的思考を養うためには、物事を意識的に分解し、それぞれの要素ごとに自分の中で仮説を立て、論理付けていく必要があります。まずは、「論理的に考えよう」という意識こそが、論理的思考を養う最初の一歩になるでしょう。
まとめ
論理的思考と直感的思考は対極にある考え方です。一般的には営業職には論理的思考が必要だといわれているものの、シーンによっては直感的思考も役立つため、使い分ける必要があります。論理的思考は鍛えることができるため、日々意識しながらトレーニングに励むと良いでしょう。