公益財団法人長野県中小企業振興センターにて、マーケティング部支援センター副部長として働く山岸良至さん。
中小企業振興センターでは取引振興支援や設備融資事業担当に従事されていた経験があります。以前より長野県に腰を据えていらした山岸さんに長野県の経済の歴史や現状、そして現状抱えている課題をどう解決していくのか、長野県の経済変革期を担う当事者に「稼ぐ」為に必要なコトが何なのかを聞かせて頂きました。
現在の活動の中心
山岸さんが担う仕事
マーケティング支援センター自体は平成20年に立ち上がり、長野県の産業支援を補う公的機関として中小企業の販路開拓や経営支援などを行ってきました。
支援先は生産財に含まれる製造業と消費財に含まれる食品産業等に分かれており、私は生産財を担当しています。
マーケティング支援の活動の中心は環境作り
現在の業務の中心は、(株)日立製作所や、(株)デンソーなどの大手メーカーに長野県の中小企業の技術を直接提案する機会を設けることです。
大手メーカーへの提案となると、多くの中小企業が提案に到達する前に門前払いになってしまいます。そこで、公的機関の我々が顧客との接点を作ることで中小企業もメーカーへ技術提案をしやすい環境をつくっています。
もちろん、メーカー側からのニーズも事前に把握し、ニーズに沿った企業との接点を作れる努力をしています。
始めはメーカー側に話を聞いてもらえないことも多かったのですが、平成12年から年間15社近くとの接点を作り続けてきましたので、現在ではメーカー開拓のノウハウも充実してきています。メーカーにも中小企業にも良質な取引を発生させられる良い環境を作れていると思っています。
その他には長野県新技術・新工法展示会などで最新の技術などを提案する機会を設けている展示会開催などがあります。
今決まっているものとしては、医療用機器の研究開発と生産技術開発を行っているテルモ(株)と10月に展示会を開催予定です。
そこではシリコンバレースタンフォード大学でバイオデザインを研究されている池野文昭教授にも登壇頂き、医師の医療分野の動向などを講演して頂く予定です。
その一環で県内の支援機関の医療機器ビジネスに精通したコーディネーターを紹介し、有効活用することにより、戦略的に医療分野向けの技術提案の場を作っていくことが目的です。
製糸業から始まる長野県の歴史
第二次世界大戦をきっかけに大きく変わったこと
長野県内の経済の歴史は製糸業からスタートしました。
そして、第二次世界大戦後に工業機器メーカーが長野県へ疎開し、カメラ部品などの産業が栄え
更に昭和40年代に入りカメラ部品やパソコンなどの小型産業が急成長しました。
しかしその後、円高の影響で生産拠点を東南アジアへシフトしていく企業が突如増加してしまいました。
そのため長野県内では東南アジアシフトで起きてしまった空洞化をどうにかしないといけないという風潮が生まれ広がっていきました。
元々カメラ部品など精密微細で培った技術力を持っていたので、当センターではその技術力を国内に残っていた自動車、医療業界へ転用出来ないかと動きだしました。
浮き彫りになった中小企業の課題
こういった技術の転用とあわせて当センターで何か出来ることはないかと模索していた中で始まったのが、メーカーと中小企業のマッチングでした。
稼働後に分かった中小企業の課題としては、技術力はあるものの品質や工程管理の整理が出来ていないということでした。
メーカーからは、意識をモノからコトへ変換していき、付加価値を加える変化を求められていたのです。
営業強化への取り組み背景
現場での明確な課題
営業強化研修の開催自体は平成20年の中小企業振興センター立ち上げと同時に開催されています。
先程、展示会を開催していると話をしたのですが、色んな展示会を開催するうえで、展示会での売り込み方に課題を感じていました。
当時はどの中小企業もメーカーをどうやって攻略していったら良いのか分からず攻めあぐねていたのです。
私が同席した商談の場でもサンプルを紹介するだけで終わってしまったり、自社の技術の話を淡々としたりするだけのことが多く、かつ一方的で顧客の話を聞かないということが多く見受けられました。
営業強化の取組みとその後の変化
営業強化セミナーを開催していくうえで変化してきている部分はあるなと感じています。
当初より座学研修を実施しており、充分とは言えませんが考え方などは徐々に浸透していると感じています。
近年では、座学に加え演習を取り入れた研修にシフトチェンジしています。やはり、体験しないと身に付かないこともりますからね。
その結果、リピーターも増えています。また研修を受けた社長や工場長が会社内で、そのノウハウを展開してくれている為、現場まで満遍なく良質な営業が浸透している様に見えます。
営業強化でセレブリックスを選定した理由
コンサルタントからの面白い紹介
研修では毎年新しいカリキュラムを設けることにしているのですが、そのコンテンツに悩んでいたところ、あるコンサルタントの方に「はめ込み型で装着していく特殊なロールプレイング研修を実施する面白い会社」があるとセレブリックスさんを教えて頂きました。
演習の際に、一旦ダメなポイントで止めてフィードバックをしてダメだったポイントからやり直す。
こういった方法で実施している企業は他にはなかったのでどういった成果が得られるのか非常に楽しみです。
明確に取り組まなければいけないテーマ
昨年のカリキュラムを実施した直後、今後強化していきたいと感じたポイントが課題抽出の部分です。
購買意欲のないところからどれだけ潜在的な課題を引き出すかということです。
その課題抽出に関しては、セレブリックスさんが、最も注力をしているポイントだということでしたのでお願いしたいと思った背景がありました。
これから期待する人材
必要なのは目先の営業成果ではない
これからの営業に必要なのは、目先の営業成果というよりは、マーケティング力だと思っています。
今の世の中、営業企画という職業が少ない気がしています。
なぜなら、製造や開発設計、デザインなど様々な方々のニーズを把握したり、他部署との社内調整や彼らの考えていることを翻訳していける調整力、そして世の中の流れ、顧客のニーズ、誰が顧客で本当の課題は何なのかをしっかり見極められる必要がると考えているからです。
営業=プレゼンという間違った認識
いまだに「営業=プレゼンテーション」だと思っている方が非常に多いですね。
他の支援機関でも営業研修を実施しようとすると、プレゼンテーションの企画を発案される方が多いです。
支援機関や経営者の方の「営業=プレゼンテーション」という印象を、「営業=本当の課題は何なのかを見出す課題解決営業」へ変えていきたいと考えています。
長野県の未来は
大学を卒業後の研究開発をされていた方々が、長野から東京など県外に出て戻ってこないということは長野県の企業に魅力が見出せていないからだと思っています。
企業が研究開発したものを活かせる環境を作り事業にしていく流れをきちんと仕組化していくべきなんです。経営者の方々と一緒に問題意識をもって技術開発から事業展開が出来る取組みを構築出来れば、更に良い人材を採用出来たり、戻ってきてくれる人材も多くなると思っています。
これからの長野県の中小企業は白地しかなく、出来ることも多いです。
市場の変化に耐えられる競争軸を作る意識を常に持たなければならないので、経営者の方々と一緒に技術力、モノづくりの成長と併せて、経営の意識も変えていきます。
まとめ
長野県の歴史から未来までを伺えましたがいかがでしたでしょうか。
技術力は日進月歩の世界ですが、技術力の成長を安定させる為に必要なのは「稼ぐ」こと、つまり営業力というのはどの地域でもあてはまるのかと思います。
是非、この機会に営業手法の見直しなど実施し、更なる成長を遂げて頂きたいです。