株式会社HARES CEO兼ランサーズ株式会社副業社員として働く西村創一朗さんのキャリアは、株式会社リクルートキャリアからスタートしました。新卒で入社し、いかにして営業としてキャリア形成になったのか。業績を上げるコツや時間の使い方、今の仕事への影響をうかがってきました。
目次
あらゆる方法でアプローチし、つながりを作っていった営業時代
営業時代の経歴を教えてください。
2011年に大学を卒業し、リクルートエージェント(当時)に入社。法人営業として、インターネット業界の人材紹介営業を担当していました。4年目からは新規事業開発キャリアがメインになり、5年目の秋にリクルートキャリアの人事採用も担当。さらに、入社3年目にスタートしていた複業が軌道に乗ったタイミングで法人化しました。
どのような手法で営業をしていたのでしょうか?
いわゆる人材紹介エージェント業で、クライアントから求人をいただいたり、頂いた求人に対して、求職者から応募してもらえるように、求職者を担当しているキャリアアドバイザー向けに広報を行ったりと、採用に関わるコミュニケーション全般を担当する業務を行っていました。
入社一年目の頃は、新規開拓営業のために、まだ取引がない企業のリストを作り、ひたすら電話をかけることからアプローチを始めます。ホームページに電話番号がなければ、お問い合わせフォームから連絡したり、業界の人事担当者や経営者が集まるイベントに顔を出してつながりを作ったり、Facebook経由で社長につないでもらったりと、ありとあらゆる手法を使っていましたね。
長時間労働=成果ではないことを知った
忙しそうなイメージですが、勤務時間は長くなりがちでしたか?
比較的ワークハードな会社で、会社を出るのは10時、早帰りでも8時台でした。通勤時間は片道1時間半。学生時代に結婚して子供もいましたが、見られるのは寝顔だけという生活でした。ファザーリングジャパンという団体の活動もやっていて、仕事を全力でやりながら家庭も大事にするというワークライフバランスが充実しているパパ達を見ていましたし、自分もそうなりたいと思っていましたので、モヤモヤとした感覚を持っていました。
その状況をどうやって変えたのですか?
マインドを変えたことで、遅くても8時台には帰れるようになり、かつ成果も上がるようになりましたね。
僕はMVPを受賞した先輩の話を聞きに行くことを習慣にしていたのですが、そのうちの一人が、部門で一番残業時間が少ないにもかかわらずMVPをとったという人でした。限られた時間の中で最大のパフォーマンスを上げていたんです。そこで、聞いたことを完全に真似するようにしたら、効率化ができました。
具体的にはどんなことをしたのですか?
資料作りなど、かなりメリハリをつけていました。不要な資料作成は、時間の無駄でしかありません。資料が必要な場合でも、手書きでOKなのであれば、その場でホワイトボードに書けば済みます。そうやって、なるべく資料を作らないようにしました。
商談相手が中小企業やベンチャーの社長など、意思決定できる人であれば作らない。一方で、大企業の担当者で決裁者が別にいる場合は、その人が説明しやすいような資料を作って渡すようにしていました。
資料を作るときも時短のための工夫をしていましたか?
資料作りの上手な先輩に資料を見せてもらい、それを丸パクリしていましたね。そうすると自分がゼロから作るよりも2~3倍速いスピードでできますし、高いパフォーマンスを出すことができるんですよ。
サービス説明より、課題を解決できることを伝える
商談相手が決裁者でないことも多いと思いますが、成約のためのコツはありますか?
2つあります。ひとつは、担当者のスイッチを入れること。社内でプレゼンするのは彼らです。そのとき、右から左に流すような感じだと意思決定してもらえる可能性は低くなります。そこで、担当者に「これはいい!」と感じてもらい、当事者意識を持ってもらえるようにしていました。
もうひとつは、一人歩きできるような資料を作ることです。仮に、上司の机の上にポンと資料が置いてあるだけであっても、「これいいね」と思ってもらえるようなもの。ペライチぐらいの資料に端的にまとめたものを作るんです。冊子になっていたら誰も読まないですからね。
刺さるポイントを見つけるのは難しいですよね?
「本当に大切なのは何なのか?」というシンプル思考が必要ですね。あれもこれも大事で、この商品の魅力はこれとこれと・・・となってしまうと何も伝わりません。クライアントは商品説明を聞きたいわけではないですからね。大切なのは、その会社が抱えている課題は何で、解決のためにどんなサービスを提供できるかという部分。具体的な話は、サービスに興味を持ってもらってからの話なので、最初は課題解決に関することだけで十分です。
では、課題を知るために、何をすればいいのでしょうか?
リクルートでは、最低でも3C 分析をしていました。その会社の商品のことをきちんと理解した上で、想定課題、仮説を持って臨むんです。それをいきなりぶつけるわけではないですが、あらかじめ考えておくことで質問がシャープになります。
それらをうまく伝えるために、工夫していたことはありますか?
目線を合わせることが大事ですね。「相手の知識レベルに合わせる」という意味なんですが、営業先で採用に関する業界用語を使っても理解できませんので、相手の知識レベルを察して、言葉を選んで伝えることを大切にしていました。
逆もまた然りで、営業先の業界のことまったく理解できていないと高度でハイコンテキストなインプットはしてくれません。ですから、こちらから目線を合わせに行き、「この業界のことを分かっています」とか、「御社のことを勉強してきました」ということが伝わるようなコミュニケーションを心がけ、「この人なら分かってもらえる」と安心感を持ってもらうようにしていました。
やりがいはクライアントの業績アップ。つらいときは上司や仲間に支えられた
特に、やりがいを感じたエピソードを教えてください。
僕が紹介した人がきっかけとなって、クライアントの事業がV字回復したり、新規事業が誕生したりするのを見るのが大きなやりがいでしたね。特に印象深いのは、夢を持ちながら、さまざまな理由で採用を躊躇していた経営者がいたのですが、僕とコミュニケーションをとる中で、「やりたかった仕事を実現するために、採用にチャレンジしたい」と意識が変わりました。結果的に、その採用によって長年描いてきたソーシャルゲームが誕生し、大ヒットしたんです。採用がなければ、ゲームは世に出ていなかったわけで、そこに自分が関わったことは大きな喜びですね。
逆につらかったときのエピソードはありますか?
たくさんありますね。入社2年目の冬に、クライアントの事情が重なって自分のキャパを超えたことがありました。僕は長男気質で先輩や上司に頼るのが苦手。勝手に自分で自分を追い込んでしまい、年末年始の休みすらも寝れない日が続いたんです。そして、年が明け、アポの帰りに「電車に飛び込もうかな」と思っている自分に気づき、泣きながら上司に電話しました。そうしたら、「今一番大事なのはクライアントではなく、お前の健康を取り戻すことだ。お前を苦しめてるもの全部言ってくれ」と言ってくれたんです。結局、上司と先輩が仕事を巻き取ってくれ、僕は平常心を取り戻すことができました。本当に良い上司、良い先輩で、今でもお世話になっているんですよ。
営業経験があるからこそ、今の仕事ができている
営業スキルが、今の仕事に役立っていると感じる点は?
ビジネスマンとして、あるいはフリーランスとして必要なことは、すべて営業時代に学ばせてもらいました。自分がどんなバリューを提供できるのかを常に考えるマインドや、それに対してどれぐらいのプライシングをすれば双方にとって納得感があり、意思決定してもらえるのかという相場観は営業で培ったものです。
さらに、社内事情や意思決定権者が誰なのかということを肌感覚で理解できるようになったからこそ、今の仕事ができています。意思決定の勘所や、担当者が評価されるポイントを意識して提案すると、やっぱり刺さるんですよね。これは営業の経験があったからこそ身についたものです。
今、営業の仕事をされている方にメッセージをお願いします。
「己を知り、敵を知れば、百戦危うからず」という言葉がありますが、僕はさらに踏み込んで、「己を愛し、顧客を愛せば、百戦危うからず」と考えています。自社の商品を信じ抜く、愛し抜くということが大前提。その上で、お客さんのことを知り、好きになること。本気で応援したい、悩みを解決したいという気持ちになって、それを行動で示すことができれば、成果は自ずとあがってくると思います。
また、営業として一番必要なスキルは学習意欲だと考えています。僕は新しい業態を担当するとき、近くの大型書店に1時間入り浸り、必要な本を購入し、自分なりにレポートにまとめていました。それが自信につながっていたと思います。ぜひ、いろいろなことを学ぶようにしてください。
まとめ
営業は10人いれば10通りのやり方があります。先輩のやり方を真似ることで業務効率と成果につなげた西村さんの経験は、非常に参考になるものです。そして、営業で身につける感覚は、ビジネスマンとして必要なスキルに直結するとのこと。ぜひ、さまざまな経験を積み、将来の成功につなげてください。