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分析に必要なデータは、セールスの現場に眠っている〜LAPRAS株式会社 Salesマネージャー 中島佑悟さん〜

現在のビジネスシーンにおいて、データを元にしたセールスは、今や常識になりつつあります。それは、取引先ともっとも近い距離にある営業マンも同じです。しかし、「データ収集の方法」「データの活用法」を熟知している方は、意外に少ないんじゃないでしょうか?AIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を提供する、LAPRAS株式会社のマーケティング・セールスチームのリーダーとして活躍する、中島佑悟さん。今回は中島さんに、セールスに欠かせないデータ分析のあり方を教えていただきました。

データ分析の本質は「営業マンの主観」にある

セールスに欠かせないデータ分析のポイントを教えてください。

データと聞くと、ほとんどの方が客観的・定量的な数字を思い浮かべます。資本金とか従業員数とかですね。もちろん、これらも大切な指標です。しかし、企業の営業課題を解決する術は、「ありもののデータ」には存在しません。

コール数や商談数といった行動数、チャネルやメンバー毎といった内訳数字にしか目がいっていないケースも多く、それだけでは課題の輪郭しか分からず原因の探索や課題解決には不十分だと思っています。課題解決の答えを知っているのは、実際に取引先と接している営業マンなんです。

営業が商談をした状況や内容、課題解決策はなんだったのかなどのデータを作るんです。彼らの行動や主観など、定性的な情報を言語化するところから、本当のデータ分析が始まります。

言語化というのは、具体的に何を指すのでしょうか?

例えば私たちは、「HubSpot」というCRMサービスを活用しています。管理画面に取引先の情報を残す際、自社の担当者、取引先の担当者のポジションなどが挙げられます。

これ以外にもそういった目で見て分かる事柄以外にも、自社の強みや弱みを伝えられたのか、商談時に特定の役割の人が同席したのか、取引先は競合他社にも相談をしているのかといった、営業マンの主観で”この案件は受注できそうだ”と思う理由を言語化して貰いデータにしていきます。

その営業マンが持っている情報を、1つのデータにまとめます。営業マンの行動は、1つ1つがブラックボックスになりがちです。そんなブラックボックスに包まれた情報を1つ1つ分解し、言語化して記録するところから、本来の「データ分析」が始まります。

私は前職で、広告会社に所属していました。当時はとにかく足で稼ぐ営業スタイルでしたが、当時から1人でエクセルを活用して記録を残していたんです。商品が売れる・売れないの背景を知ることで、効率よく営業を回す方法を考え続けていました。

仮説と検証の蓄積で得た新たな商談スタイル

営業マンが持つ情報のデータ化と分析は、どのように進めればいいでしょうか?

まずは、営業チームが商談で踏むステップは何かを明確にしましょう。

  • ・問い合わせが発生した。
  • ・問い合わせに対応した。
  • ・ヒアリングをして商談に行った。
  • ・取引先へ提案した。
  • ・決裁者にアポイントを取った。

こうしたフェーズ分解をして、「ここに課題がありそうだ」となったら、優先順位を決めてやり方を変えてみます。

このやり方だと、営業マンの主観に頼りがちになりませんか?

それでも構いません。仮説が完璧かを考えるよりも、本当にその主観が正しいのか、テストをなるべく早く回す方が有益です。

私たちの場合、お客様からの話や営業の主観に基づいて、週1回のミーティングを行います。現在の案件について報告をする過程で、「この案件って、なぜ止まっているんだろう」とコミュニケーションするわけです。

「じゃあ、このポイントで対応してみよう」とフィードバックをし、実際に現場で検証します。1人で理論を組み上げることに固執せず、チームで取り組んでいるんです。主観をそのまま信じるというよりも、「彼らの考えを信じた上で、それを検証するためにデータ化をする」という考え方に近いかもしれませんね。

情報共有は、全てミーティングの場で行なっているんですか?

先ほど紹介した「HubSpot」のアプリケーションで、チーム全員が自由にデータを入力していきます。その中で「この項目について検証したい」という考えが生まれたら、管理画面上でプロパティを作成して検証していきます。

実際にプロパティを見てみると、検証項目が合計で約120個ありました。検証した結果、その中でも実際に成果に起因していそうなのは5個くらいでしたが、それでも成約に大きく影響する成果のある発見があります。

成約に大きくつながったプロパティについて、教えてください。

そうですね。印象的だったのは「商談に同席する人間の属性」です。具体的には、取引先を訪問したとき、最終決裁者である社長が出席する時よりも、エンジニアの方が同席した方が、成約につながる確率がはるかに高かったんです。

そこで私たちは、「成約の障壁となるのは、運用者との接触にあるのかもしれない」という仮説を立てました。そこで訪問する際、先方にシステム運用のエンジニアの方に同席をお願いし、彼ら向けの動画を作成したり、コミュニケーションスタイルを変えたりしました。

データを元に、どうやって「ここが課題だ!」と決めたらいいですか?

非常に難しい質問ですね。「ここを変えればインパクトが大きいかもしれない」という目星をつけて、優先順位をつけて行動することをおすすめします。どうしてもデータ分析をしようとすると、営業チームの最適化という問題にぶつかります。そうすると、効率化・受注単価アップ・受注率アップなどの改善すべきポイントを、一度に解決できる変数を見つけようとしがちです。

営業の持つ情報の分解と同じで、「何を解決したいのか」を最初に1つ決めた方がいいでしょう。そもそも、自社の課題を明確に定義できているのか、というところから始めないといけません。

モチベーションが低いのか、商品力が弱いのか。ここが不明瞭では、ロジックが飛躍して「じゃあ新しいマネージャーを雇用しよう!」みたいな、あさってな行動につながってしまいます。

明日からできるデータ分析の「第一歩」

データ分析のために、今日から営業マンには何ができますか?

まずは、自分の暗黙知を言語化するところから始めましょう。まずはサービスが売れている原因が、顧客にあるのか、自分のプロセスか、商品なのか、あるいはそれ以外の要素かの仮説を立てます。

その中で、何が受注に影響するかを主観でいいので書き出します。それをデータ化して確かめて、ある程度仮説が立証できたのなら、どんどんその仮説を回してみる。間違っていても構いません。仮説を回せば回すほど、売るための焦点が定まっています。

営業スキルを高めるビジネス書には、多くのノウハウが書かれています。ターゲティングや資料の作り方、話すスピードを合わせようなど。それぞれの著者に流儀があり、それが成約に多少なりとも影響を与えているとは思います。

しかし、大切なのは現場で培われた暗黙知のデータ化です。普段の商談を、大きな実験の場と思って取り組んでみてください。

言語化したデータをまとめるのに、どんなツールを使うのがいいですか?

特別なツールは必要ありません。まずは、エクセルやGoogleスプレッドシートでクロス集計をするのが基本だと思います。スプレッドシートであれば、ファイル>ピボット テーブルで、2つのデータを簡単に検証できます。

例えば「年齢が若い営業の方が成約できている」と思ったなら、まずは営業マンの世代と受注本数でクロス集計をかけてみます。そうしたら、今度は受注本数と受注率でもチェックしてみましょう。すると、受注本数は若い人の方が多いけれど、受注率はベテランの方が高いことがわかるかもしれません。

まずはこの検証を、1人で取り組んでみてください。データ分析のための単位を決めたり、商談ごとや人ごと、取引先ごとで集計を変えてみたり。受注できたのは何が良かったのか、できなかったのは何が悪かったのか。これらの検証を1人で取り組んで、ある程度形にできたらチーム単位で取り組んでみましょう。

役職によって、データの使い方は変わりますか?

どこにフォーカスすべきかの視点は変わります。現場の人間なら、自分自身の「売れている・売れていない」にフォーカスします。マネージャーなら「次はどんな人材を雇えばいいか」など、より多角的な検証が必要でしょう。

まとめ

現場の課題を本当に解決できるのは、現場に眠る生きた情報である。そして、その生きた情報は営業の主観にこそ隠されている。営業データ分析を強みとしている、中島さんの話からは、盲点と思えるようなデータのありかを知ることができました。定量的なデータを追う前に、まずは皆さんの主観・定性的な情報をまとめるところから、営業の質を高めるカギを探ってみてください。

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