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男女のキャリアギャップが存在しない社会へ〜一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事 小川由香利さん〜

一般社団法人 営業部女子課の会の代表理事を務める小川由香利さんは、営業職として働く女性のキャリア形成をのために、コミュニティづくりや能力開発の場を創出しています。小川さん自身も営業職としてキャリアをスタートさせ、現場に存在する「営業女子ならではの悩み」を、肌で感じ経験しました。そんな営業女子が抱えるの現場と課題、そして解決策を小川さんに伺いました。

営業職での挫折。営業部女子課との出会い

小川さんのキャリアを教えてください。

私は2010年に、ソニーへ新卒入社しました。学生時代は理系に属していて、友人は皆開発者、研究者の進路が多かったですね。私の場合、学生時代にNGOで活動していた経験もあり、コミュニケーションや数値目標を達成することに喜びを感じるタイプだったので開発職ではなく営業をやりたいと思うようになったんです。

そこで当時、ソニーが技術営業の部門を募集していることを知り、営業とエンジニアを結ぶ職種は私に向いているのではと思い、入社を決意しました。

実際に営業に配属されてからの環境はいかがでしたか?

やっぱり、男性が多いなと。入社時は男性営業マンが全体の8割を占めていて、平均年齢も40代後半くらいで。私が退職するまでの4年半、ずっと若手の下っ端ポジションでした(笑)。配属された福島では、その傾向がさらに顕著でしたね。そこで一番苦労したのは、すでに完成している男性独自のコミュニケーションに慣れることでした。

マイルストーンのように可視化できる数値目標とは別に、「この人はこういう角度でネゴシエーションした方がいい」という不文律がそこかしこにありました。しっかり外堀を固めて進めてきた案件が、昔ながらの関係性から大きく路線変更することも多かったです。

こうした相互のパーソナリティを心得たコミュニティが、夜の飲み会などで独自に形成されていたんですね。新人ゆえの経験不足も影響して、その全てを把握することは本当に大変でしたね。

それでも営業職は続けたかったですか?

はい。福島配属後、2011年に東日本大震災があって東京に異動が決まったんですが、異動先の配属はマーケティング部でした。

マーケティングも事業に欠かせない要素ですが、自分が描いていたキャリアの目標を1つも達成できていないことがもどかしくて。必ずまた営業に戻って活躍しようという思いはずっと心の中にありました。

そこから、どのように営業部女子課と出会ったんでしょうか?

営業への熱意は変わりませんでしたが、やっぱりモチベーションがすごく下がってしまったんです。その時に、現在一緒に代表理事を務めさせていただいている太田彩子さんの著書に出会ったんです。

非常にわかりやすく、実践的な内容に元気をもらって、すぐ「太田さんに会いたい」と思うようになりました。そして2012年、営業部女子課が開催する年1回のイベントの幹事に応募して、営業部女子課に参加するようになりました。当時周りは男性ばかりの環境で、高いモチベーションで働く女性たちとの出会いはとても刺激的でした。

営業部女子課で多くの学びを得て、社内でも営業部に戻ることができたんです。ソニーでの自分の中での目標も達成できたので、次のステップとして、現在はアクセンチュア株式会社で経営コンサルタントとして活動しています。

営業女子のキャリア形成の3つの課題

営業部女子課では、具体的にどのような活動をしているんですか?

営業部女子課には全国にいくつかの支局があり、私は神奈川県のリーダーを任されていました。横浜市出身として、地元の女性参画を支援していきたいと思って。それで、セールスウーマンの先駆けとして有名な林文子 横浜市長との対談を実現させました。

また林市長からのご縁で、横浜市の男女共同参画への支援もさせていただきました。この2つは、非常に大きな成果だと思います。

すごい実行力ですね。女性営業に共通する課題はどこにあると思いますか?

営業部女子課は2009年設立して、今年で10周年を迎えます。2015年には女性活躍推進法が施行されるなどの社会的な背景もあり、首都圏を中心に女性営業はかなり増えてきたと思います。しかし、それはいわゆる役職の付いていない社員の話です。未だに管理職やリーダー職に就く女性は、まだまだ不足しています。

これまでビジネスを構築してきた男性は、やはり社内政治や根回しなどの、段取りが非常に上手です。非合理的に見えることでも、お客様にサービスを届けるまでのマイルストーンで、こうしたスキルは欠かせません。

男性は男性の先輩・上司からこうした能力を学べますが、女性は手本になる「上の立場の女性」が、そもそも不足しています。この人材不足のギャップが、女性営業のキャリア形成の足枷になっていると思います。

教える立場の女性が、まだまだ不足しているんですね。

他に強く感じるのが、女性の方が男性と比べて、仕事を任された時「私にできるのかな」と不安になる割合が非常に多い点です。これはアンケートでも、非常に顕著なデータとして表れます。

男性は失敗をしても、それを乗り越えようとするポジティブさが見て取れます。女性の場合は責任感が強すぎるのか、一度の失敗で自信を喪失し、前へ進めなくなるケースが非常に多いです。

マネージャーの方々は少し手間に感じるかもしれませんが、彼女たちに対して「大丈夫」と後押ししてあげたり、自信をつけるコミュニケーションが非常に重要です。男性と同じように接した結果、十分な能力があるのに「私にはできません」と拒絶されてしまい、頭を抱えるケースが結構あるんです。

私も同じようなケースに出くわしたことがあります!

男女で差別するわけではありませんが、やはりコミュニケーションの軸は、男女で差があるのは事実だと感じますね。

もう1つの課題は、首都圏と地方とのギャップでしょうか。ここ5年ほどで、首都圏の女性営業は急激に増えたと思います。営業部女子課で行う勉強会も、はじめはタスク管理などの基礎的なものだったのが、今では営業のオーラルプレゼンや資料作成。クロージングにつながる活動など、かなり具体的な内容への需要が高くなりました。

一方で、地方の支局の動きを見ると、同じ5年でもまだまだ変化は少ないと思います。地域によっては、女性営業ではなく女性参画と切り口を広げないと、人が集まらないほどです。私が福島で感じたことでもありますが、地方にはまだまだ女性営業の働く環境が整っていないと感じます。そのギャップをどう埋めていくかは、今後の大きな課題です。

10年後には「営業部女子課が不要な社会」へ

小川さんが考える、今後の目標や女性営業の未来図を教えてください。

女性に限らず、営業に求められるスキルレベルは年々高まっています。単純に「モノを売る」のではなく、情報やテクノロジー、ITツールの進化に対応できるスキルを磨かなくてはなりません。これからの人材は、1つのスキルを極めたI型の人材ではなく、複数の強みを持つH型の人材です。

その上で、コミュニケーションやネゴシエーションのような可視化できない能力を育てること。双方を勉強できる場を提供できることが、営業部女子課の大きな強みです。

やることはまだまだ山積みですね。

そうですね。物議をかもす言い方ですが、私は10年後に営業部女子課が必要なくなることが理想だと考えてるんです。

営業部女子課の創設時、女性営業はマイノリティな存在で、彼女たちのためのコミュニティを作りたいというところからスタートしました。現在、首都圏では男女の営業職のギャップはなくなりつつあります。次の10年で、地方の女性営業もマイノリティから脱却させたいんです。

私はアクセンチュアでも、女性キャリアのプログラム開発をしています。すると男性の新入社員から、「なぜ女性だけのプログラムが必要なんですか?」という質問があるんです。

現在、弊社の採用は男女比率がちょうど5:5なんですが、キャリアレベルが上がると男8:女2のように男性が圧倒的多数に変わります。

それでも、「男女でなぜ別々なキャリアプログラムが必要なのか」という疑問を持つ彼らが年齢を重ねた頃には、ジェンダーの意識なしに理想のキャリア形成が作れる社会になる気がしています。営業部女子課が目指す社会も、まさにそれではないかと思うんです。

まとめ

小川さんは自身の体験から、男女間に存在するキャリア形成や営業職のスキルのギャップを痛感し、その解消に奔走しています。

  • 「男性だから」
  • 「女性だから」

そんな言葉が当然のように存在しない会社環境や社会が実現できれば、私たちの働き方やキャリアプランはもっと自由になる。営業部女子課の活動と小川さんの話を聞いて、強く感じました。

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