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インサイドセールスツールを浸透させ、組織の生産性を上げる ~株式会社フジテックス一森 雄介さん~ 

新たな営業手法として注目を集めるインサイドセールス。多くの企業が注目しながら、導入に踏み切れていないという声も聞きます。そこで、2015年からインサイドセールスを導入している商社、株式会社フジテックスがどのような取り組みをしてきたのか。また、導入に際し障壁となったことや、それを解決した方法を伺ってきました。インタビューにご協力いただいたのは、取締役として販促事業の営業の責任者兼、全事業部の仕入れと購買部門の責任者を担われている一森雄介さんです。

アメリカの商社を目の当たりにし、インサイドセールスの導入を決意

一森さんがインサイドセールを導入しようと考えたきっかけをお聞かせください。

2015年、アメリカに仕入れに行く機会があり、当時の最先端の商社を見学しました。社内ではバランスボールに乗っている人や、テレマーケティング用のヘッドセットを付けている人が大勢いて、みんなパソコンに向かって仕事をしているのです。「あの人達はWebの担当者ですか?」と聞いたら、「いや、セールスをしています」ということで、大きな衝撃を受けました。そこは物販の会社でしたので、「Amazonが脅威だ」とのことで、より付加価値をつけていくために、動画やコンテンツ作りに力を入れていました。商社でありながら、社内に動画の撮影スタジオも完備していたほどです。

その翌年に当社の本社移転があったのですが、「どうせならインサイドセールスができるようにしよう」ということで、アメリカの企業をイメージして、テレマの集中ブースや撮影スタジオも完備し、いろいろなツールの導入を始めることになりました。

社内に作られた撮影ブース

その当時、日本では導入している企業は少ない状態でしたよね?

今でこそ働き方改革で少し変わってきましたが、当時は「訪問しないと営業マンじゃない」とか、「足で稼げ」ということが普通に語られていました。「アメリカは土地が広く物理的に訪問できないからインサイドセールスが通用するけれど、日本には合わないんじゃないか」とも言う人もいましたね。

しかし、日本も北海道から九州まであり、出張で行くと1日2件しか回れないということもあります。お客様に「ちょっと来て」と言われると行くしかなく、結局はたいした話ではない。電話でも済む内容だったと空振りして帰ってくるわけです。当時は、それがまだ許されていましたが、最近の生産性を追求する中では、許されることではなくなってきています。

抵抗する人は必ずいる。納得させるためには、成功事例を共有することが重要

社内への導入はスムーズでしたか?

最初に入れたのはベルフェイスの「オンライン商談」でした。トップダウンで、「やらないとペナルティだ」という勢いで導入しましたが、かなり反発を受けましたね。現場からすれば、「自分たちは今のやり方で十分できている」という認識があります。そのため、「お客様は嫌がるんじゃないか」といろいろなことを言うわけです。結局、浸透させるのに一年ぐらいかかりました。今でこそ社内でインサイドセールスという言葉が普通に出てきていますが、最初は「何だ、インサイドって。内勤か?」という人もいたほどです。

お客様の第一印象はどうでしたか?

最初はお客さんも抵抗されるのかなと思っていましたが、反応は上々でしたね。「なんか最先端だね」と言われ、目新しさも手伝ったのかもしれません。「それ何のシステム使っているの?」とか、「うちも使いたい」と言われたこともあったほどです。

抵抗が多い中、どのように浸透させていったのでしょうか?

最初から、全員が全員、インサイドセールスの価値に気づいて実践するというのは、なかなか難しいと思います。そこで最初は、価値が分かる社員だけにきちんと説明し、育てて、成功事例を作るようにしました。そして、その成果を共有していくようにしたのです。

例えば、長崎の商談をオンラインで行い、受注に成功したケースがありました。本来であれば、長崎から問い合わせが来たら、東京から出向くか、もしくはお断りしていたのですが、それをオンラインで進め、200万円の受注をしたわけです。それはもう「インサイドいいよ」となりますよね。そうやって成功事例をどんどんと共有することで、全員が使えるようになっていったという感じです。

もともとはセールステックツールを使いこなせていなかった人で、今はしっかり使いこなせている人もいるのでしょうか?

いますね。きっかけがあれば使うようになりますし、それが成果にもつながります。そのためには成果を社内で認めることも重要だと思います。当社では朝礼で表彰したり、受注速報をメールで流したりしています。みんなの前で発表することが大切で、それを見聞きすることで、必然的に覚えなくてはと思えますし、自分で勉強するようにもなります。

生産性の向上、交通費の削減に加え、顧客へのスピーディな対応が可能になった

現在、使いこなしている人とそうでない人の違いはありますか?

使っている人は、確実に生産効率が上がっていますね。使っていない人は置いていかれている感じです。特定のニッチな業界に関しては、まだ使う必要はないと思うのですが、そうでないところは、受注や新しい見込みを取ってきたりする部分で差が出ています。いろいろな失敗経験や成功体験を積んでいく中で、「こういうシーンはオンライン商談が向いているけど、こういうケースでは使ってはいけない」といったナレッジが社内に貯まっていきますよね。今はそれをルール化して運用しています。例えば、トラブルの時にオンラインを活用すると大火事になりますから、出向く必要があります。また、クロージングも、場合によってはオンラインでよいものもありますが、訪問して最後にきちっと説明しないといけないケースもあります。こういったことを区別して運用することで、生産効率を上げながら着実に成果を上げていけるわけです。

他にも効果はあるでしょうか?

移動時間の削減があります。目に見える数字としては、1日の商談数が、平均3件から5件になっています。私の部署の場合、営業担当者が30人弱いるのですが、そのうち、ベルフェイスを使っているのが20人弱。これはフィールドも兼務している社員が使うのですが、合計で月間150時間の削減ができています。月間150時間と言えば、人を一人雇っているのと同じですから、効果は大きいですよね。さらに、交通費も下がりました。空振りがなくなるので、出張費が削減できるのです。今となっては、初動はオンラインを使うのが一般的で、本気度と言いますか、確度を確認してから足を運ぶようにしています。以前であれば、「とりあえず行きます」と言うところでしたが、まずは確認をして最適なタイミングで行くという風に変わったのです。結果的に、お客様にはスピーディに対応できるようになっています。今までであれば、「再来週に出張の予定を組むので・・・」というような感じで、タイミングを逸していたところがありました。それが、「明日の何時にパソコンの前に来てください」と言って話を進められるのですから、双方にとってメリットが大きいですよね。

手法が進化してもマーケティングの本質は変わらない

これから導入する企業が、注意すべきことはありますか?

思いつきや感覚で進めるのは危険です。やはり、数字の裏付けや、導入する目的と効果について、ある程度想定して導入するべきだと思います。私は投資効果検証のスケジュールと一緒にイグジットラインを決めるようにしています。これを決めておかないと、ズルズルと行ってしまいますから。「3ヶ月後にはこのぐらいの数字を見込んでいて、効果検証を行います。そこでダメだと判断したら止めます」という話を、最初の稟議の段階で盛り込みますね。また、最初はスモールスタート。つまり、一番下のグレードのアカウントでやってみて、使えるようになったらフルの機能にすることも大切です。

インサイドセールスを成功に導くために欠かせないことはありますか?

インサイドセールスは、マーケティングのベースがないと正しく活用できないと思っています。そのために、マーケティングの基本について一通り勉強しておく必要があります。結局、マーケティング的な視点がないと、単発的な営業で終わってしまい正しい効果は得られません。また、営業力も必要です。営業力がない人がインサイドセールスをやると、機械的にスコアリングをし、ただ単にメールを送るなど、それ自体が目的になってしまいます。それが本当にお客様に響くのか、心を動かしているのか、差別化されているのか、という視点がないとダメですよね。最先端のツールを使うことにあわせて、営業手法も変えていかなければいけませんし、進化をやめたら終わりです。そのために会社も個人も変わっていかなければならないのですが、それが何であっても営業力をつけるという本質は変わらないと思います。

今後、見据えていることはありますか?

我々は商社ですので、お客様にあらゆる角度からサービスを提供できるというのは一つの強みだと思います。その適切な提案をするためには、全事業部が同じシステムで統合され、クロスセルが可能な状態にする必要があります。そのために、インサイドセールス部門が中心になって、それが全部できるのが理想かと思っています。少し先を言えば、当社は「100事業構想」を掲げていますので、あらゆる事業でそれらを全部含めた形で展開できれば一番よいのかもしれません。

まとめ

いち早くインサイドセールスを取り入れ、積極的に活用している株式会社フジテックス。営業担当者にiPadを持って行かせ、動画をセールスに活用するなど、新たな取り組みも導入しています。これからの時代を制するには、新しいソリューションを積極的に導入し、効果・検証を素早く行っていく力が欠かせません。株式会社フジテックスのこれからの取り組みに注目したいと思います。

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