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世界一の営業が実践する社内外コミュニケーション【ファーストイン・ファーストアウト】とは~株式会社セールスフォース・ドットコム~アカウントエグゼクティブ大澤篤志さん

営業未経験から株式会社セールスフォース・ドットコムへ入社し、アカウントエグゼクティブまでのキャリア形成を社員平均の1/2の時間で駆けあがった大澤篤志さん。そして入社からわずか3年のキャリアでセールスフォースというグローバルな企業の少数精鋭のスタートアップ企業をお客様にする部門において2017年度個人売上世界一に輝いています。そこで今回は大澤さんに、営業に就き始めた頃の苦悩と世界一に輝くまで意識されていたことをお伺い致します。

営業は経営に並ぶクリエイティブな仕事

―営業を始められたきっかけはなんですか?

営業のことを初めて考えたのは大学生の時でした。ある新聞の記事中に某有名企業の“今期売上何億増”という決算報告の内容が目に飛び込んできたんです。その時にふと頭をよぎったのが、この売上の内訳は個々の営業が持ってきた積み重ねで、要は“営業の力”なんだろうなということでした。そのため当時は「企業の力=営業の力」と考えており、営業が出来る人間は市場価値が高まると考えていたんです。もちろん実際に営業を経験してみても「企業の力=営業の力」という当時の考え方は変わっていませんし、大袈裟ではなく昔から営業職で成果を残すことができれば何でもできるだろうと思っています。更に今では、営業は経営に並ぶクリエイティブな仕事だと思っています。何故かというと自分の提案自体に価値を感じて頂き、その価値に投資をして頂くというのは物凄く難しく、一方で誇りを持てる仕事だと考えているためです。営業は外部の経営者に対して課題を仮説立て、進言を行い外部の経営を変えることができる唯一といっていい役割ですので、そこにはクリエイティビティな仕事が求められていると思っております。

お互いのKPI握り合って尊重しながら営業活動をしていく

―大澤さんの今の役割は何ですか?

私がいる組織の役割は大きく、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4つに分かれていまして私は現在、3つめのフィールドセールスを担当しています。入社当初はインサイドセールスへの配属で、経験を積みフィールドセールスへ異動したという経緯です。フィールドセールスの役割は、アポイント獲得を目標としているインサイドセールス担当と2人1組になり、ターゲットからどのようにして良質なアポイント獲得していくかを一緒に擦り合わせることと、その獲得したアポイントを成約させることの2つが求められます。

―大澤さんにとって良質なアポイントを供給してもらうためにどのような要望をしていますか?

第一優先にしているのはヒアリングができていなくても良いので役職者にこだわって新規のアポイントを獲得することです。“ヒアリングが出来た一般職の方のアポイント”よりも、“名刺交換だけでも良いのでという役職者のアポイント”が私は好きなんですね。役職者と会えば経営にインパクトを与えるためのディスカッションができるので、とりあえず「役職者と会わせてほしい」という依頼をしています。ですがインサイドセールス担当も有効アポイント数というKPI(※1)をひとつの目標としています。有効アポイントとは、役職者に対して課題感を聞けて提案ができたかどうかを追う指標ですので、有効アポイントになる確率の高い一般職のアポイントを獲得しがちなんです。ですがインサイドセールス担当に対しては「必ず商談を前進させるから役職者のアポイントを獲得して欲しい」と伝えてお互いのKPIを握り合って、お互いを尊重しながら営業活動をしています。

―必ず商談を前進させるという大澤さんの自信はどこから生まれてくるのですか?

私は獲得したアポイントに提案に行く際、自社のプロダクトの話はしません。ビジネスの話をしに行きます。ビジネスというのは例えば、「御社のビジネス目標は何ですか?」や「ビジネス目標と現実のギャップってどれくらいあって、そのギャップを埋める為に3つあげるとしたら何ですか?」という経営や戦略についての話です。“ビジネスを行う上で課題を持っていない経営者はまずいない”ので、提案出来るチャンスは必ずあります。ですので初回の訪問ではプロダクトの話をすることしていません。もちろん課題に沿った提案をするので、提案の反応が悪いということはありません。冒頭にも話をしましたが、この課題を聞き出して、お客様に合わせて提案するということが最高にクリエイティブで楽しい部分だと思っています。

※KPI:key performance indicatorの略で、目標達成度を評価するための重要業績評価指標のことをさす。

アポイントが取れなかったインサイドセールス時代の上司の一言

―どのような経緯でそのような営業手法に辿り着いたのですか?

私のいる組織では、入社してからインバウンドの対応を経てアウトバウンドでのインサイドセールスを担当するのですが、このアウトバウンドでアポイントが全くとれなかったんですね。その際に当時のマネージャーから「製品名は一切出さない方が良い」「御社のビジネス課題に対して仮説を提示したいので商談のアポイントを頂きたい」といった方法に変えなさいとアドバイスを頂いたんですね。そのことをきっかけに大きく営業手法が変わりました。私にとっての大きな転換点のひとつでした。なぜ、製品名を出さない方が良いのかというと、お客様はどこの企業のどんなプロダクトを利用するのかよりも、自社の何が解決されるのかに対して興味があるためです。なので会社名やプロダクト名で勝負するのではなく、サービスを導入したら“何の業務が改善する”や“どのくらい業績が伸びる”といった点にフォーカスします。お客様が求めているのは「これが価値ある投資である」という安心や確信なのです。

―具体的に訪問した際にはどんなことをお伝えするのでしょうか?

例えば、商談のアポイントを頂けたのであれば、現場ではより生々しい臨場感のある仮説を確認したり、安堵感を実証するような事例をお伝えします。そうすることで“自社だったらどうなるのか”をより詳細に想像させることができます。

―仮説や事例を現場で使いこなすためには何を意識していましたか?

“仮説を有効に活用するにはインプットの量を増やす”ということと、”事例をうまく使うには前日に学んだ事例を翌日に早速使う”ということですね。

共通して大事なことは「インプットした内容をアウトプットできる環境を作る」ことです。

加えてなぜ、仮説と事例を活用するのかといった目的も理解しておいた方が良いかもしれません。

―仮説を利用する目的はなんですか?

仮説は、お客様に対してあなたのことを調べて興味を持っていますよ!ということを示すためのサインであり、更には質問をしやすい環境を生み出すためにあるものだと思っています。業界のことやお客様のこと、またお客様の競合のことなど多くの情報がWEB上にも落ちていますのでそういった情報をベースに仮説を立てます。ただあくまで仮説は仮説ですので100%の精度を求めているものではありません。失敗しても良いのでインプットを行い仮説を考えるといったアクションをひたすら繰り返すということが重要です。そして考え抜いた仮説をお客様にぶつけてみることで新たな課題が見つかったりすることもあります。そうやってどんどん仮説の精度を上げていき、提案に繋げていくイメージです。

―事例の目的はいかがでしょうか?

事例の目的は、課題を競合他社のプロダクトでなく自社のプロダクトでどう解決していくかをお客様に考えてもらえるように誘導するために活用します。例えば、既存顧客のセールスフォース活用事例を提案し、顧客接点の全ての課題に対して包括的でシームレスな支援がセールスフォースでしか出来ないということを理解して頂ければ、課題解決の選択肢をセールスフォースの1択に限定させてしまうことが可能です。そうすることでお客様が競合他社のプロダクトとセールスフォースどちらにしようということではなく、セールスフォースを使ってどう解決していくかという考えに至ることがゴールです。最初は難しいかもしれませんが、まずは目的を理解して取り組んでみるということが大事なことです。大切なのは「どのツールを選ぶか」ではなく「選んだパートナーとどのように勝っていくか」を考えることです。

経営者のミッションをくすぐりながらやるべきことを伝える

商談を実施するうえで大切にされていることはありますか?

やはり初回訪問でしょうか。1時間の初回訪問の際にはソリューションを提示をせずにヒアリングのみに徹するということはお伝えしましたが、この狙いとしてお客様と一緒に提案を共創していき、お客様にワクワクして頂く環境をこちらで醸成させる狙いがあります。この段階で課題解決の合意から戦略策定まで落としていき、どんな課題を解決するかが明確になった際に次のアポイントを獲得しにいきます。

特に経営者の方と提案を共創していくうえで大切なポイントがあります。経営者のミッションは「企業が平時の時こそ社内に危機感を醸成すること」です。事業がうまくいっているときだからこそ危機感を社内に伝播させるのが経営者の役目なのです。そこで技術革新や新しいツールなどで業務の改革を推進できる経営者だからこそ、そういった経営者の役割をくすぐりながら「この取組み一緒にやっていきましょう!」という提案をしています。

提案を共創していく中で経営者のミッションを押さえ、課題感を共有していきながら、物理的に自社のプロダクトでないと解決出来ない部分に着地させるということが商談では重要だと思っています。

気持ちよくサポート頂くために当たり前のことを当たり前に行う

―営業活動全般を通して他にも大切にしていることはありますか?

これは社内外関わらずコミュニケ―ションで大切なことなんですけど「ファーストインファーストアウト」を常に意識しています。社外コミュニケーションであれば、お客様からのメールは即レスするということです。お客様と営業のコミュニケーションの中で一番ストレスを感じさせることは”いつ質問が返ってくるのか分からないとき”なんですよね。であればやることは2つしかありません。

  • 「すぐに回答出来るものであれば即レス」
  • ・すぐに回答出来ないものでも「明日の何時までに回答します!という即レス」

これしかないです。なのでこの2つを徹底的にやりきるというのがシンプルですが大切です。メールって後回しにされがちなんですけど、私が知っている限り売れている営業はこういうことをきっちりやっていますね。

―社内の方へのコミュニケーションはどうですか?

弊社の場合、SEや上長へ商談同行のお願いをすることが多くあります。その際には提案書の事前レビューは勿論、同行の目的やゴール、期待していることを共有し訪問を迎えるようにすることを意識しています。そうすることで、各々のパフォーマンスも上がり結果的に受注率が上がるのです。あとは、受注した時に少しでも関わってくれた方に対して御礼を大切にしています。気持ちよくサポートしてもらうために、そういった当たり前のことまできちんとやりきっています。こういったことを継続していくことで本当に周囲の反応も変わってきます。実際にSEの方からも「目的のよく分からない商談に同行することが多いけど大澤君の同行は1度もないので100%の力が発揮出来る」と言っていただけます。他の方に実践できていなくて、私ができていることがあるとしたら、こういった当たり前の社内外コミュニケーションなのかもしれませんね。

まとめ

営業は属人的な領域が多いと言われていますが、営業をしていくにあたり、やるべきことはもしかするとシンプルなのかもしれません。会うべき相手に会い、何をすべきかをお客様と話し合い、自社プロダクトでしか解決できないことだと認知して頂くことです。それでも生まれてしまう大きな差のはじまりは、ちょっとした気遣いや工夫なのかもしれませんね。是非、大澤さんのように社内外へのコミュニケーションを意識し、信頼される営業へ変化していきましょう!

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