アポ数にしばられない営業のシステム化で、チームプレーを実現する〜株式会社WACUL・小島様

成約に特化した100%反響営業

Q:現在はどのような仕事をされていますか。

WACULは、AIアナリストというASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスを開発・提供している会社です。私はマネージャーとして、そのAIアナリストの営業を行なっています。特徴的なのは、常にお客様とのアポイントが設定された状態で営業をスタートすることです。我々営業チームは、お客様へ製品説明や提案を行なってご契約までをサポートするところに専念しています。

Q:その部分に集中するのには理由があるのでしょうか。

普通の会社では、アポとりなどのマーケティング的な部分から契約後のフォローまで営業がカバーすることも多いですよね。しかし弊社ではKPIを明確にして、業務を適切に整理しようと取り組んでいます。アポイントの獲得は、それをKPIにしている別チームが担っています。だから我々は設定されたアポに沿って営業を行ない、いかに契約をクロージングしていくかに焦点を当てています。このように集中することによって、契約をとることにフォーカスでき、常にそれだけを考えられる状況が作られています。

アポをとることも営業が行なっていると、次第に何を目指しているのか分かりにくくなります。そして「アポ数を増やせ」とプレッシャーがかかると、契約見込みのないアポを入れてしまうことが増えるなど、かえって効率が悪くなります。だから打ち合わせを設定させてもらったお客様に対してとにかく価値のある提案をして、成約までつなげようと取り組んでいます。これによって日々のスケジュールも、営業に集中しやすい環境になっています。

Q:一般的な営業の業務を分割して、訪問・説明・成約までに集中しているのですね。小島様は営業の組織の中ではどのような役割なのですか。

マネージャーとしての仕事は売り上げ進捗の管理、チーム業務の管理・改善、人材の育成や教育などです。営業チームは私を入れて6名体制ですが、ビジネスセクションには、他にもアポイントをとるチーム、契約後のお客様をサポートをするチームがあります。各チームのマネージャーの上に役員がおり、彼がビジネスセクション3部門を統括するといった組織構成です。

Q:アポとりと訪問の分業によって、ニーズとのミスマッチは起こりやすくなるのではないでしょうか。

弊社ではそうしたミスマッチはあまりありませんが、一般的にはアポとりと訪問を分けるとミスマッチが起こりやすくなるでしょう。アポ数のみを追っていると、契約可能性の低いアポでも積極的に獲得してしまうインセンティブが発生するからです。そうした問題は、ビジネスセクションの各マネージャー間での連携によって防止しています。各セクションのマネージャー、役員と代表とが毎週ミーティングを行い、その場でチーム間連携の課題や他のチームへの要望などを吸い上げ、常に改善していってミスマッチを減らすために取り組んでいます。

Q:営業する相手はどんなお客様ですか。

あらゆる会社の経営者やWEB担当者です。お客様は本当に多種多様ですね。誰もが知ってる巨大企業へ訪問することもあれば、九州の山奥にある、2、3人規模のとても小さな会社様にもビデオ会議で営業をしたこともあります。企業の大小を問わず実に様々なお客様にお会いする機会がありますが、基本的なメインターゲットは中小企業の意思決定者の方々です。特に、WEBのチームがあるけれど人数が少なく人手が足りないところでは、下手に人を雇うよりも、2〜3人分の働きをするAIを入れたほうがコストを10分の1や20分の1にまで抑えられます。

Q:一連の仕事はどのような流れで行なっていますか?

弊社のAIアナリストのサービスに自分からご登録頂いたお客様がアポとりの対象となります。つまり、全くAIアナリストに興味をもっていない方に弊社からいきなり電話をかけてアポイントをとろうとすることはありません。基本的にほぼ100%反響営業であることも、珍しいポイントの一つです。そのように既にある顧客リストから、アポイントをとるチームがある程度厳選してアポイントを設定します。そこで日時と時間が決まると、そこからは我々営業チームの担当です。

我々は設定された通りに訪問し、そこでお客様と初めて対面します。そこで一時間くらいご説明をした後は、必要に応じて電話やメールでやり取りをして、成約までつなげていくといった流れです。

Q:どのような説明を行なっているのですか?

話の内容は技術的なことが多いです。WEBのプロに対してWEBのサービスを売るので、かなり高度な話になることも多いです。一方で、WEBのことは全然分からないのに急にWEBの部署で担当になった方にご説明する場合もあるので、そうしたときは、簡単な言葉で分かりやすく価値を伝えるように心がけています。

相手は実に様々な会社様なので、入念に下調べを行なっていきます。どのようなことを行なっている企業か、所在地、人数などをチェックしています。
また、AIアナリストはWEBサイトのアクセス解析サービスなので、契約の対象はそれぞれの会社様のWEBサイトです。そのため、営業に行く際には、その会社様がどのようなWEBサイトを持っているか、そしてどのようにビジネスを行っているかといったことを下調べしていく必要があります。調べた内容によって話す内容も変わってきます。

Q:精力的にそうした訪問を行なっているのですか。

そうです。現在はビデオ会議も含め、一人当たりだいたい一日に2.5件くらい訪問しています。営業チームの中での役割分担はないので、アポをとるチームがアサインしたら、その日時に訪問できる営業スタッフが対応しています。あえて業種や地域別に担当を分けていません。

これは会社全体の方針でもありますが、一人一人の能力に差を出さないようにしています。営業の仕事は、個人の能力に因る部分が大きくなってしまうことがよくあります。「ここはAさんが行くと契約をとれるが、Bさんが行くととれない」といったことがよく起こるのです。しかし、その差はなるべく減らした方がいいですよね。なので、誰でも同じくらいのバリューを出せるような状態にするために、営業に関する知識や、「このお客様にはこういう話が刺さりやすい」といったノウハウはなるべくチーム全体で共有するようにしています。最終的には全員が同じレベルの話ができるように取り組んでいます。

Q:個々人の能力の差をグラフなどで図式化して、競争の中で成長を促す手法とは対極ですね。

一人だけスーパー営業マンがいても、その売り上げは長続きしません。弊社には「システム志向」という大きなビジョンがあるので、その行動原理に沿って、営業の能力も均一化、平準化しようと試みています。他にも「ユーザー視点」「チームプレイ」といった行動指針があり、それらを追究した結果、現在のようなユニークな営業につながりました。もちろん多少の個人差はどうしても出てきてしまうものですが、なるべくその差を埋める努力をしています。

Q:顕著な差がある場合、自分は営業に不向きだと感じてしまいますよね。

私も、数年前までは自分は営業に向いていないと感じていました。当然多少の向き不向きはありますが、業種が変わると手応えがかなり違うと思います。営業の成果が出ない場合、個人の素質というよりも、会社の管理サイドに問題があることが多いです。営業のやり方や知識に関して、きちんと基準を決めて、それをみんなが守ることが重要です。さらにその基準やルールを必要に応じて更新し、共有していく体制を整えていれば、ある程度以上に個人の差が開くことはないと思っています。

営業が嫌いだった新卒時代から、現職の営業マネージャーへ変貌

Q:これまではどのようなキャリアを辿ってこられたのですか。

現在社会人として7年目であり、これまで3社で働いてきました。1社目は大手不動産会社で営業をしていました。最初の1年間はOJTで色々な部署を回って勉強していましたが、二年目に正式に配属されて以来、全ての会社でずっと営業をやっています。

Q:新卒で不動産に就職したならば、営業の可能性が高いですよね。

正直に言うと、営業をやりたいとは思っていませんでした。もともとはインドネシアに大きな建物を建てたいと夢見ていました。そのため海外事業部の本部長に直訴するなど自分なりに働きかけていたのですが、1年目のOJTで法人営業の部署にいた際に目をかけていただいたこともあり、営業に配属になったんです。ありがたい話ではありましたが、やはり「営業は嫌だな」と思ったことも事実です。
なぜなら、現在の仕事が100%反響営業であるのとは対照的に、そこでは100%新規営業だったんです。一日40件飛び込み営業をこなすこともありました。典型的な泥臭い営業で、基本的にはどの会社へも営業していいと決められていたので、毎日他の人と被らないようにしながらガリガリ営業していました。

Q:一日40社の過酷な営業の経験から学んだことはありましたか。

営業は笑顔と根性だ、ということですかね(笑)。心は強くなったと思います。その職場でBtoBの営業を3年ほど経験した後、転職しました。転職した理由はいくつかありましたが、一番大きい理由は、早くキャリアアップをしたかったからです。大きな会社独特の、もどかしさを感じていました。
そのため、社会人4年目にして不動産系のベンチャーに転職したんです。

Q:二社目では積極的に営業をしようと思われたのですか。

そのときも、消去法で営業を選びました。不動産業が好きだったので前職に続いて不動産に携わることにしましたが、ずっと営業しか経験してこなかったので、営業しか自分にはできることはないと思ったんです。私は最初に務めた大手不動産会社では営業の成績がダントツのビリでした。それで営業は絶対にやりたくないと思いながら転職活動をしていたのですが、結果的に再び営業になりました。

振り返ると、二社目での経験が、「これから先ずっと営業として働いていこう」という決心につながりました。二社目のベンチャー企業は業務用の不動産を扱っていたので、一社目と同じ不動産でも相手が全然違いました。そこでは営業成績でダントツのトップをキープすることができました。チームリーダーを務めさせてもらったこともあって、初めて「営業って楽しい」と感じました。それまでは「今後ずっと営業でいいのかな」と迷う気持ちがありましたが、そのときに吹っ切ることができたのは良かったですね。

Q:二社目が営業をする上で転機になったのですね。そこから再び転職を考えたのはなぜですか?

ビジネスモデルに限界を感じたからです。転職へ踏み切ったきっかけは、現在の会社へかつての同級生から誘われたことですね。2年前のあるとき、飲み会で何気なく「最近会社を変えようか迷っている」と話していたら、「じゃあうちにきなよ」と声をかけてもらったんです。話を聞くと、業務内容も面白そうで、何よりAIアナリストのサービスがリリースされるタイミングだったので、営業の組織をこれから作ることにやりがいがありそうだと感じました。それで現在の会社へ転職することにしました。

Q:最初から営業のマネージャーだったのですか?

いえ、最初は営業が1人2人くらいしかいなかったので、マネージャーはおらず、上に直属の役員がいただけでした。そして、2016年の8月に私が初のマネージャーになりました。

数字に努力が表れる営業の面白さ

Q:営業の面白さを感じるのはどのようなときですか?

やはり契約をとったときですね。それに尽きます。いろいろな会社で経験してきましたが、営業には「ものすごく楽しい営業」や「常に楽しい営業」はないと思います。いつも数字がつきまとうので辛いときもありますし、一日に何人ものお客さんに会っていればしんどいときだってあります。そんな中でいつが気持ちいいかといったら、やっぱり契約がとれたときですね。そのときの「やった!」という感触が癖になって続けています。

Q:現在はマネージャーに就かれていますが、プレイヤー思考ももち続けているのですか?

そうですね。プレイングマネージャーとして、意識をもっています。プレイヤーとしては現在もそうした喜びがありますし、マネージャーとしては部下と一緒に取り組んだ案件が成功したり、私が一緒でなくても苦労して部下自身が案件を成功させたりしたときには自分のことのように嬉しいです。これまで取り組んできたような知識の共有やルール作りがチームの中でうまくはまり、それが契約に結びつくことにも大きなやりがいを感じますね。

Q:営業に対するマイナスイメージをもつところからスタートして、現在はやりがいを感じながら働いていらっしゃるのは大きな変化ですね。同じように営業に対して苦手意識をもっている若手社会人に対してアドバイスをするとしたらどうでしょうか。

率直な言葉ですが、「実は営業って楽しいんだよ」と伝えたいですね。それに、営業の中にも色々なタイプの営業があります。まずBtoBとBtoCの違いがあり、BtoCの中でも対面や電話営業など手段も様々です。だから多種多様な中に、その人に合った営業がきっとあると思うのです。そこにはまればきっと楽しく感じられるのではないでしょうか。

私の場合、大手不動産のときには、BtoBの完全新規、さらに長期スパンでの営業でした。一回だけ訪問してそこで契約が決まるなんてことはなくて、ほとんどの場合一年または二年かけてやっと決まるかどうか、といった営業です。正直いって、それは私には向いていなかったのだと思います。二社目、三社目も同じBtoBではありましたが、割と短期決戦です。それに関しては、私は得意だと自負しています。

Q:つまり短期ではなく長期が向いている人もいるかもしれませんし、ルートよりも新規が得意な人もいるかもしれないので、人それぞれなのですね。若い社員が入社してきたときには、営業についてどんなことを伝えていますか?

弊社も大きくなってきて社員も増えたので中には新卒社員もいますが、営業にはまだいません。でも営業として最初に伝えたいことは、当たり前ですが「営業は売り上げを追うものだ」ということです。そこは明確に意識していないといけません。営業は売り上げを追い、契約を目指すものです。

「契約とってこい」といったニュアンスとは違います。実は弊社では、数字の個人目標をオフィシャルには定めていません。一応、各社員との面談で個人目標を決めていますが、普通の会社のように「今月100万とれよ」といったトップダウンの個人目標は掲げていません。一方、チーム全体の売り上げ目標は明確に掲げ、それを全員で追っています。

Q:チームのために頑張ることがモチベーションになるのですね。

まさにそうです。それがないと、知識の共有などもしなくなってしまうと思います。社員同士での交流の時間も意識的にとろうとしています。他社に比べても比較的多いのではないでしょうか。オフィスにはバーカウンターの設備もあり、交流を促す環境が整っています。

Q:営業の「孤独な戦い」のイメージとは真逆ですね。悩んでいる人には率先してコツを教えているのですか?

そもそも悩んでいる人は、なんで自分が伸び悩んでいるのか分かっていないことが多いです。そのように問題点がはっきりしていない場合は、ただ話を聞いていても仕方がないこともあるので、営業に同行することが多いです。優秀なメンバーばかりなので、そこで気づいたことをフィードバックすれば、自分でアクションを起こして解決してくれます。営業の課題は人それぞれ違いますし、最終的に自分の行動を変えるのは自分自身です。一回一回の営業でお客さんに接するときに、常に自己反省をして「どこが良くなかったのか」と反芻していくことが重要です。それでも悩んだ時には、客観的なフィードバックから解決のきっかけを掴んでもらいたいですね。

Q:営業の管理の手法としては、そのように一緒に営業にいってみることが一つのポイントかもしれないのですね。

そうですね。一度同行してみないと、現場でその人がどんな表情でどんな話をしているかは分かりません。もちろん同行することがマネージャーとしての全てではないと思いますが、定期的に一緒に営業にいくべきだと考えています。

Q:御社ではアポ数は皆均等だと思いますが、どんな部分が違いを生む要素なのでしょうか。

それは、やはりクロージング率の違いですね。つまりアポに行ったうち、どのくらい契約につなげられたかを表すパーセンテージです。ただ、それを上げるための特効薬のようなものはないんですよ。もしかしたら話の内容かもしれませんし、打ち合わせ後の動き方かもしれません。しかも人それぞれポイントは違うでしょう。とにかく地道に経験を積み重ねていくしか、成約率を上げる方法はないのだと思います。だから私たちもひたすら地道に取り組んでいます。

営業のプロフェッショナルを目指して研鑽を続ける

Q:現在6人の営業チームも今後は大きくなっていくと思われますが、小島さん自身の将来の目標は何ですか?

将来的にも営業で生きていきたいと考えています。ただプレイヤーとしてというよりは、マネージャー、管理する立場として取り組んでいきたいですね。現在の6人体制のチームでも、私はマネージャーとしてまだまだだと思っています。日常の管理などはできていますが、売り上げをもっと上げるためにどのような動きをするべきかといった根本的なアイディアや経験は不足していると感じています。そこに関してはもっと意識的に取り組んで、力をつけていくことが直近の目標ですね。将来的には、この会社にいるかいないか分かりませんが、営業のプロフェッショナルとしてマネジメントの立場にずっといられたらいいと思います。

Q:悩んでいる営業マンの背中を押すような一言をお願いします。

大手不動産の営業をしていたときの自分に思いを馳せてしまいます。あの頃の自分に「営業楽しいよ」と言っても、きっと響かないですよね。

営業の仕事は、取り組んでいる人の人口が非常に多い仕事です。しかし同時に、頑張れば上にいくことが簡単な部門なのではないかと思うんです。当然悩んでいる人は多いでしょうし、かつての私と同じように「嫌だな」と思いながら取り組んでいる人もいるでしょう。正確な数字は分かりませんが、半分以上はそうした人たちなんじゃないでしょうか。その中だからこそ、営業として腹をくくってプライドをもち、どのように売り上げを上げていこうかと頭を働かせて実行していけば、目立てる分野が営業なんだと思います。

「営業なんて埋もれがちな仕事だ」と思い込んでいる人は結構多いと思いますが、意外とチャンスはたくさん転がっています。それに営業ほど、数字で表現できる部署は他にないと思います。だから自分を出すといった点では本当に恵まれている、自分を発揮しやすい職種なんではないでしょうか。悩んでいる人は、そのように少し視点を変えて取り組んでみてほしいですね。

Q:営業で壁にぶつかったとき、アポ取りを増やせばいいのか、話術を磨けばいいのか、資料作りを工夫すればいいのか途方にくれてしまうと思います。まずどんなことに取り組んだらよいでしょうか?

増やしやすいところから増やせばいいと思います。例えば飛び込み営業だったら、飛び込みの数を増やすのが一番楽な方法です。とにかく「何かを変えたい、営業を良くしたい」と思ったら、自分の一番取り組みやすい数字をとりあえず増やしてみることをお勧めします。それに取り組んでから、話している内容なり資料なり細かい部分を見直していけばいいんじゃないでしょうか。何でもいいので一歩踏み出してみれば、必ず見えてくるものがあると思います。踏み出さなければ、同じ場所でぐるぐるして「もう嫌だ」と放り出したくなってしまうでしょうね。何かを変えたいと思ったときに、とにかく手近なものから変えてみるのがいいと思います。<了>

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