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【前編】カスタマーサクセスの潮流と共有すべき価値観 ~カスタマーサクセス部門がまず最初に行うべきこととは~株式会社フレイスリー 前田考歩氏(写真右)と後藤洋平氏(写真左)

現在、急激に増えているサブスクリプション(サブスク)というビジネスモデルをご存知でしょうか?製品、サービスを一定期間利用することに対して代金を支払うというビジネスモデルです。今、動画配信や電子書籍、顧客管理システムから勤怠管理システムなど様々なジャンルに広がっています。

本テーマで取材をしたお二人の共通点は、このサブスクモデルのサービスをお客様が満足出来るレベルで利用できるように支援する「カスタマーサクセス」という役割を担当されている点です。

今回、話を聞かせて頂くのは前田考歩さん(写真右)と後藤洋平さん(写真左)です。前田さんは株式会社フレイスリーにてビジネス向け動画制作サービスのプロデューサーを担われている傍らカスタマーサクセスを自身で推進しながら、docomoイノベーションビレッジにて、カスタマーサクセス勉強会を開催されていらっしゃいます。一方後藤さんは、HR領域のサービスでカスタマーサクセスとして多くの企業の導入支援を担当されていらっしゃいます。このようなカスタマーサクセス経験が豊富なお2人にサブスク全盛期のカスタマーサクセス成功法を伺ってきました。

カスタマーサクセスがなぜ流行っているのか

※1:SaaS(サース) Software as a Serviceとは、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアもしくはその提供形態のこと。

※2:コモディティ化とは、市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。

後藤:
カスタマーサクセスはSaaS(※1)の流行により、急激にニーズが高まっていますよね。

私がカスタマーサクセスという言葉に触れたのは、4年ほど前のことでした。転職先のSaaS企業で、代表肝煎りのもとカスタマーサクセスサポートという部門を設立し、以来ずっとその責任者をしてきたのですが、当時は「変わった名称だな」と思っていました。笑 耳馴染みのない言葉なので、名刺交換の際に、どんな役割なのか質問を受け、うまく説明できなくてしどろもどろになったり。それが急激にいまバズワード化していて、驚いています。

なぜ今、こんなに盛り上がっているのかというと、今と比べて昔は売上管理システムや顧客管理システムなどの業務システムは、買い手も売り手も少なかったからだと考えます。昔はユーザー企業が情報システムを保有するニーズは強いが、対応できるベンダーが限られているという状態でしたので、売り手側の論理でモノが作られて、売り手中心のモノやサービスが世の中に提供されたという時代背景がありました。そのため、買い手側が情報収集、比較を行うなどの選択する力が弱いという状態が長く続いたのです。

ですがクラウドコンピューティングの発展によって、従来の業務システムを上回る機能や利便性を企業が素早く展開できるようになり、誰でも気軽に使いやすい製品が増えています。また多くの情報がインターネットに記載されており、今は買い手側の選択権が強くなっているという流れがあります。カスタマーサクセスは元々業務システムのようなIT、サービスの分野で必要性を問われ増えてきたのですが、今では小売りや流通、教育、飲食など多種多様な分野で広がっています。

前田:
加えてクラウドコンピューティングの発展を利用して、以前からある業務システムの類似システムを安価に自分達の手で開発できるようになってきました。よってコモディティ化(※2)が進むんですよね。そのため、機能で差別化できないのであれば、その他のサービスやカスタマーサクセスの導入支援で差別化するしかないという狙いも背景にあると思うのです。

カスタマーサクセスを始める際には何を意識していくべきか

後藤:

昔はモノを作った後、購入してもらったらそこで営業活動が完結していましたが、サブスクモデルはお客様に毎月(若しくは定期的に)契約を更新して頂く必要があります。つまり、お客様が毎月利用するメリットを感じ、“実現したいことができている”という実感がないと、解約に直結してしまうのです。

そのため、カスタマーサクセスを実現する組織を立ち上げる際に一番最初に意識すべきことは、サービスを活用することで得られるメリットや利便性などの中から、お客様にとっての「最終成果物は何なのか」を考えないといけないですよね。そしてその最終成果物を得るまでのプロセスがどうなっているのかを理解する必要があります。自分達の製品やサービスは、そのプロセスにおけるどの領域において、なぜ不可欠なのか。競合優位性はどこにあるのか。費用対効果は十分得られているか。サブスクリプション型での契約が継続するかどうかはそこにかかっています。

しかし、提供するサービスを利用して最終成果物を得るのは、あくまでお客様の仕事であるため、お客様のビジネスの実態を、わたし達が把握するのは容易ではありません。プロセス上のどこに困っていて、何がボトルネックになっているのか問題点を見極め、製品やサービス、組織をどう活用すれば、貢献が出来るのかを抑えないと本質的なカスタマーサクセスにはつながらないなと思います。

カスタマーサクセスチームを成功に導く組織共通の価値観

後藤:
カスタマーサクセスチームを成功に導くためには、まずカスタマーサクセスの仕組み、考え方を組織全員が研究、共有して全社的な価値観にすることが大切です。よくあるのが、カスタマーサクセスチームだけが独立して存在することで上手くいかないケースです。この場合、全社的な価値観が統一されておらず、実際に支援場面で提供側の内部で利害関係が発生してしまい、不要な対立が生まれてしまうことがあるのです。

カスタマーサクセスのチームとしては最終成果を出すために必要な行為として提案しているにも関わらず、別の部門にとっては、その提案によって損失が生まれるのではないかと構えたり、もしかしたら社内政治上ネガティブな働きかけをされてしまうのではないかといった不安が沢山生まれるんですよね。部門間もそうですが、もちろんカスタマーサクセスチームの中の価値観もあわせないといけません。カスタマーサクセスチームとは、何を役割とする組織なのかなど認識あわせができてないと大変なことになります。

極端な例ですが「クライアントのカスタマーサクセスを実現しよう」という意識のもと、「お客様のために値引いてきました!」と言って帰社してくる若いメンバーがいたりします。これはもちろんカスタマーサクセスではないですよね。特に若い営業パーソンにありがちなのですが、お客様から出された要望は「すべて叶えなければならない」と思い込んでしまうことが多いのです。お客様の要望を持って帰って、会社に対して本気になって交渉することが悪いことではありませんが、どのような基準で、どのようなイシューについて意見をかわすのか。これがずれてしまうと、混乱が発生することになります。組織は提供しているサービスに対して適正な対価を頂いて、捻出した利益を再投資するという循環を作らないといけないはずです。

そもそも“利益を再投資する循環”という価値観を理解していないままでは、お客様のビジネスを成功させる支援ができるはずもありません。

カスタマーサクセスチームの目標達成構造

後藤:

カスタマーサクセスは瞬間風速的な売上や利益に一喜一憂しなくていいと思っています。サブスクモデルの構造は、積み上げていくことが大切なので瞬間風速的な売上よりも積み上がる仕組みを考える方が大事だと思います。そのため、目標設定も気を付けなければいけません。カスタマーサクセスチームの目標を営業チームと同様に売上金額や獲得件数に設定をした瞬間、カスタマーサクセス担当者は「支援の質」や「接触頻度」について考えなくても良くなってしまいます。カスタマーが成功しなくても、営業チームが売上をあげていればカスタマーサクセスチームの目標は達成されてしまう訳です。

更に組織目標を達成させるためには、メンバーの異なる強みが組み合わさるようにして個人が固定化した役割を持たない組織にしておくことが化学反応を起こさす上で重要だと考えています。「こういう活動をしたら、こういう成果が生まれる」というわかりやすいゴールイメージが、実際にやってみる前には見えないのが、カスタマーサクセス活動の本質的な特徴だと思います。「この方法がイイネ」という新しい発見が偶発的に発生した際に良い結果を捉えて次に活かしていくことが大事です。そのためには、メンバーの多様性を活かせるよう、裁量を持ってある程度自由度高く働ける環境作りはあった方が良いと言えるでしょう。

お客様がカスタマーサクセスに期待していることとは

※3:カスタマーヘルスとは、顧客のプロダクト利用状態(頻度や使い方など)を指し、ヘルススコアは利用状態を数値化したもの。

前田:

お客様が期待しているのは、お客様の会社のビジネスの成功、達成であってそれは決して値引きとかではないですよね。導入してから何を果たしたいのか、どんな課題を解決したいのかがゴールにあって、そこに我々のサービスがどう貢献できるのかを考えてプロセスを作っていくことが重要だと考えています。そのためには、なるべく早く製品を使いこなせるようにサポートして行くことがカスタマーサクセスだと思います。そのため、製品を使いこなすということが極々自然と出来るような構造を、我々は提供しなければいけないのです。

またそういった理想を実現するためには、我々の製品をお客様がどう利用しているのかのカスタマーヘルス(※3)を把握してないといけないですし、カスタマーヘルスの実情を知るために開発チームとの連携も必要なのです。ですからお客様のビジネスの成功にこだわり、そのプロセスに対して全社が同じ価値観をもって関わり続けられるかどうかがカスタマーサクセスの成功に大きく関わってきます。

まとめ

カスタマーサクセス前編は、潮流からカスタマーチームとしてお客様のビジネス成功に結び付けるための「共通化しなければいけない価値観」や「組織体制」、「お客様に求められていること」などカスタマーサクセスの大枠をお伺いしました。既に孤独化したカスタマーサクセス組織を持っている企業の方には非常に重要で、ためになる話になりました。【後編】スタマーサクセス成功のヒントは『ルーティーン化』ではカスタマーサクセスの、より具体的なテクニックの話を提供出ればと思います。

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